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emporte (アンポルテ)/我を忘れて・2
14代目とA
めがねって不思議な小道具だなと思う。
医学が発達した宇宙歴において視力低下、視力障害のある
人間も簡単な手術で改善される。
まして遺伝子劣悪廃止法が徹底していた帝国であればめがね
など不要であったに違いない。
この男がつけると、胸がうずくのはなぜだろうと腕枕をされながら
アッテンボローは考えた。
「曾祖父のものですよ。宮廷お抱えの絵描きだったので特別の
皇帝陛下のご配慮とやらで洒落でつけてもよいとされた骨董品
です。珍しいでしょ。」
そういってベッドサイドテーブルにおいためがねをリンツはアッテン
ボローに渡した。
「貴重品をおれに渡すな。壊したらどうする。」
「別にどうってことはないですって。」
アッテンボローの白い指に鼈甲のフレームを持たせる。
「提督も似合うと思いますけどね。」
そういわれたところで曾祖父からの形見をアッテンボローは気軽
に装着できない。
リンツはそんな気持ちを察して・・・・・・そしてアッテンボローが
めがねをつけている様子も見たいのでそっとかけてみる。
「うん。やっぱり似合いますね。インテリの度合いが4割り増しに
なります。素敵ですよ。」
・・・・・・自分より恋人がかけた方が素敵なんだけれどなと思う
青年提督だが、言葉にできない。
「いつもは自分がめがねをかけているので好きなひとがかけて
いるのを見ると・・・・・・。」
このまま抱きしめたくなります・・・・・・。
こんなものをかけたまま無理だとアッテンボローは思うけれど降り
注ぐフレンチキスのシャワーと指の動きにアッテンボローは身を
よじらせあえいだ。
「めが・・・ね、こわしちゃ・・・ぅん、だめだからさ・・・はずそ・・・」
羽が触れるようなキスから濃厚な、甘くて深い接吻けにかわって
アッテンボローは素肌の脚をリンツに絡ませて吐息を漏らしながら
呟いた。さっき抱き合ったまま抱きしめられながら、たゆたっていた
のだがこうも狂おしい接吻けを交わされるとアッテンボローの理性
などリンツの前では、吹き飛んでしまう。
めがねはそっと外されて。
指を絡められて・・・・・・。
リンツの指とアッテンボローの指。
なんでおれはこんなに色が白いんだろうとすこし自己嫌悪する。
それに声も女みたいな声になる。かすれた女の声のように聞こ
える。
「綺麗です・・・・・・提督。・・・愛しています・・・・・・。」
白い肌にやさしいキスを幾万回と受け、アッテンボローははぁん
と嬌声をあげた。
「こんな・・・声、やだぁ・・・・・・っ。」
どうしてです?
「とっても魅力的なのに。」
胸の先を指でやさしくなぶりつつリンツはめまいを起こしそうな
ほどこの腕の中のひとが愛しいと思った。
いとおしくて大事・・・・・・。
アッテンボローが自分に恋をしてくれたこと。
そして一緒に生きることを赦してくれたこと。
カスパー・リンツにはその現実が幸せ以外の何者でもなかった。
アッテンボローの腰骨にもそっと赤い印を残した。
白い体に毒々しいほどの印を付けるのはリンツの性では
なかったけれど傷を付けないように唇を当てても、つい我を
忘れてそのしっとりとした肌に吸い付けられる。
敏感なアッテンボローのものを最初はやさしく、徐々に速度を
ましてしごいていく。「ぁ、ぁ・・・」リンツの耳元でアッテンボロー
は高まってゆく声を漏らす。
アッテンボローの指もリンツのものを求めてさまよい、夢中で
手を伸ばした。
唇をあわせながら、ぴちゃぴちゃと水音を立ててそのみだらな
音が部屋を埋め尽くす。二人のあえぐ吐息と。
リンツの唇から逃れてアッテンボローはまなじりに涙をためて
「・・・し・・・てくれ・・・。このままじゃ、いっちゃう・・・」
と必死に懇願しリンツの首に腕を回した。
「一人でいくの、やだ・・・ぞ・・・お前も・・・」
朱に染まる耳朶を甘くくわえて。アッテンボローの愛くるしい言葉
を一言も聞き漏らさないようにして。
耳元で愛していますと呪文のようにリンツは繰り返す。
熱に浮かされたように繰り返す。
指を入れてみるとすっかりそこは濡れていて指を増やしても
アッテンボローは苦しまなくなった。むしろリンツにしがみつき
脚を絡めた。アッテンボローのものをしごき続けながら、リンツは
自分の体を恋人にゆっくりと沈めた。
はいってきたリンツをぎゅっと締め付けるこの感覚はリンツの
魂を狂わせる。
「・・・き、きつい、ですね・・・でも・・・」リンツは覆い被さりわざと
アッテンボローの耳元で囁いた。
「でも、最高です・・・。提督・・・愛しています・・・」
アッテンボローの艶めく唇に吸い寄せられリンツはまた唇を重
ねた。
ぁ、ぁ・・・。
二人の乱れる呼吸とあえぐ声が入り交じりゆっくりとリンツは腰を
打ち付ける。互いの肉がぶつかり合う音が響いてもアッテンボロー
も我を忘れて突き上げてくるリンツにしがみつき唇をねだった。
リンツの腰がだんだん激しく動きアッテンボローは枕に髪を振り乱
していやいやと首を振る。
それはあまりの快楽に無我夢中になってしまっているだけでもし
ここでリンツが突き上げるのをやめてしまえば後々ご機嫌
麗しくないことを、リンツは知っている。
愛してるんですよ。
情欲だけじゃなくて。
男なら誰でもいいというわけじゃなくて。
あなたじゃないと、だめなんです・・・・・・。
うなされるようにリンツの言葉を聞きながら突き上げられてアッテン
ボローは恋人の名前を何回も何回も呟いていた。
リンツはしなるアッテンボローの体の中で果てた・・・・・・。
あの二人って喧嘩しないのかなあと第1飛行隊長は女性に
あぶれてしかたなく第2飛行隊長の部屋に居座っていた。
「艦隊演習ってつまらんなあ。後方勤務の女性はほとんど
いないしいくらおれが男前でも、ロンリーな夜を過ごさねばなら
ないんだ。理不尽きわまりない。」
イワン・コーネフはそんな言葉に取り合わず持ってきていた
クロスワードパズルにいそしんでいた。
「今頃アッテンボロー提督と男殺しはうまくやってるんだろうな。
おもしろくない。」
それって。
「やっかみとかいうやつか。嫉妬なのか。ポプランさん。」
「そのどっちも。」
詰まらぬことにご執心だなとコーネフはまたロジックの迷宮
に入り込んだ。
いや、ふとコーネフも疑問に思ったことがあった。
「ポプラン、リンツ中佐が怒った姿ってみたことあるか。」
男殺しに興味ないとコーン・ウィスキーをラッパ飲みして
ポプランは答えて。
「薔薇の騎士のブルームなんとかという坊やならしかられた
ことあるんじゃねえの。連隊長に絞られることもあるだろ。」
そういうのじゃなくて。
「シェーンコップ准将は売られた喧嘩を倍にして返す御仁だし
怜悧に見えるが不満があれば顔に出るひとなんだよな。案外。
お前なぞ人間ができていないから感情むき出し直情型だろ。
アッテンボロー提督もポーカーフェイスって言うのでもない
・・・。」
だから、あの二人は喧嘩にならないんじゃないのかなと思う
けど。
散文的なコーネフさんの言葉にポプランはしばし黙考。
帰結するところ。
「リンツ中佐を怒らせればアッテンボロー提督と喧嘩になるな。
別れさせることができるじゃないか。さすがコーネフ。」
人聞きの悪いことを言うなと第2飛行隊長は雑誌で他称・
相棒の頭をたたいた。
「そういうことをいった訳じゃないだろう。あの二人が仲むつま
じいならそれでいいじゃないか。仲違いをさせたいとおれは
思ったことはない。」
コーネフはペンをかじってポプランにいった。
「でもさ、直情型のアッテンボロー提督が怒ってリンツ中佐も
静かに怒っていれば・・・修復不可能になるかもな。さすが
コーネフさん。頭がよくていらっしゃる。名案だ。名案だ。」
こらとコーネフはまた雑誌で僚友の頭をたたいた。
「リンツ中佐は詰まらぬことで挑発に乗る人じゃなさそう
だし、あの二人にくちばしを挟むとお前痛い目に絶対遭うぞ。
おれの予言だ。ポプランさん。」
お前は抹香臭いことを言うやつだなあとポプランは口をへの字
にしていう。
でも。
あの二人が別れれば。
「アッテンボロー提督、またフリーだな。さあて。いろいろ用意し
なくちゃ・・・・・・。」
まて。
「お前、艦隊演習中に何かやらかす気でいるだろ。リンツ中佐を
憤慨させるとか・・・・・・。」
「大体がリンツ中佐って無表情に近いひとだよな。お前もそうだ
けど。感情豊かに生きるすべを伝授するだけのことだ。」
リンツ中佐がアッテンボロー提督を振ったら、おもしろいだろうな
とか。
「考えているだろう。ポプランさん。」
もう一度雑誌で頭をたたかれながらポプランはにんやりとして言う。
「まあ、艦隊演習は面白味に欠けるからな。修羅場の一つあった
方が何かと刺激があっていいと思うぜ。」
といって立ち上がって口笛を吹いた。
「ま、お前は聞かなかったことにしろよ。名案をありがとうよ。
コーネフさん。」
これは関わらない方が身のためだと部屋を機嫌良く出て行った
僚友のことなど頭からおいだしてコーネフはクロスワードの雑誌を
開き今度こそ趣味に没頭した。
もう一人の撃墜王殿は自分の部屋で酒を飲みつつさて、
どうすればあの冷静沈着な14代目を挑発できるものだろうかと
あれこれと思案を巡らせていた。
そんなことなど知らないアッテンボローとリンツは今夜も熱い肌を
重ね合って、吐息の海の中で愛し合っていた。
我を忘れて。
互いの唇をむさぼりあい、抱きしめあった。
赤い印がアッテンボローの体に刻まれ、それを彼は恥じらうことなく
もっとリンツとの隙間を埋めるかのように体を寄せた。
アッテンボローはリンツを受け入れる体になっていたし、身も心も
とろけあうような恋に二人、墜ちていた・・・・・・。
3に続く。