[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。


first time・2







今夜はうまいシャンパンを用意しておこう。

部屋には静かなブルースかジャズをかけて・・・・・・花を飾って・・・・・・。

いや、それは女とのfirsttimeだ。そんなまねしたら「俺は女じゃない」とあのひとは絶対むくれる。

・・・・・・待てよ。

むくれるアッテンボロー提督も悪くはない。

ただ、今回はやっぱりfirsttime。

二人幸せな時間大事にしたいから、花はもちろん取りやめて。BGMはそれでもいい。

何せあのひとは色恋沙汰となると凡庸というか、晩生というか、シャープさに欠ける。

抱きしめるまで、きっと言葉に詰まるに違いない。

とはいえ今夜いきなりキスしちゃったりなんかすると。

firsttimeがあのひとにとって恐ろしいものや不快なものにはなってほしいとは思わない。

それなりの状況をこちらが演出しないといけないかなと思うが・・・・・・実際のところ余裕なんて

なかったりする。



本当にずっと一緒にいたいと思った。

本当にずっと一緒にいたいと思っている。



こんな気持ちは実は多彩な恋をしてきたけれど、初めてで。

実は俺もfirsttimeだったり。

なんてことを考えている小生意気になってきたユリアンが「少佐、すごく真剣な顔して何を

お考えですか。」など10年はやいことを抜かしてきやがった。

俺は仕事を定時で切り上げて。

あのひとはいわゆるワーカホリックだから俺の部屋に来るのが2100時を過ぎるころだろうという。

でもそうすることであのひとは明日、ゆっくり休みが取れるし俺も明日は非番。firsttimeには時間も

必要。

今夜、何が食べたいのか聞いてたらテイクアウトでチャイナフーズを執務室で食べるからいいという。

夜食にはクラッカーとハム。ジャンクフードもある。

朝は・・・・・・おいしいブラック珈琲を入れて。スクランブルドエッグにライ麦パン。ウィンナをいためて

サラダをつける。もっと食べたいというならトマトベースのパスタを用意しよう。



パスタはなんとなくランチになりそうだけど。

あのひとぐったりして起きれないかもな。

その道の人間に聞くと受け入れる側の疲れは激しいらしい。

でも快感も大きいとか。



肉欲だけのつながりじゃなくて。

心までつながれたらいいなと思う。

いつか、でいいんだけどね。長期戦で行けばいいんだし。



・・・・・・もちろん、乱れるあのひとを目にしたら理性のたがなんて粉砕されちまうだろうな。

情けないくらい本当、余裕なんてない。

愛しちまったもんの負けかもしれない。

なんて夕飯を作って一人で食ってた。

あれこれトキメクことを考えてると自分が作ったチキンライスでもなんかまずくない。

本当はあのひとがいたら・・・・・・・俺が作らねばならんのかな。



ま、それもいいでしょ。そんな甘い関係がいきなり構築できるとは思わない。



案外多分肉欲だけでなら簡単に二人ともつながるだろう。あっけなく。体がつながることなど男も女も

そう難しいものでもない。入れる段取りさえきちんとすれば穴にものを入れるのはたやすいし、簡単に

愉悦を味わうことくらいできる。



そういうのだけじゃなくて。

俺は自分がときにタフでないことを思い知らされるときがある。タフなふりを装っているだけで・・・・・・・ま、

それはともかく。

あのひとの胆力のすごさ。

若いくせに、人徳があるというか。

1人でいる時間が好きなところがあるあのひとは、何もかも1人で抱え込んで、大人の男として生きている

のかもしれない・・・・・・。あのアムリッツァで全滅しかけた艦隊を提督に代わって陣形を建て直し生きて

帰ってきた。



多くの同胞が、逝った。

けれどあのひとは過去を振り返りはしない。

あのひとの惹きつけるルックスだけで惚れたわけじゃない。

生命力にあふれた内奥に秘めたしたたかさに、実は安堵する・・・・・・。



あのひとと、生きていきたい。

なんていっているうちに大事な俺の提督が俺の部屋に帰ってきた。







「食べてないんすか。」

「・・・・・・明日休もうと思ったら時間がなかったんだ。」

なんていいながらやや憮然として、アッテンボローはポプランの部屋で、テイクアウトしてきたチャイナ

ヌードルを器用に箸など使ってほおばっている。

これではせっかくのブルースも台無しだからBGMはなし。

「一緒に過ごせますね。うれしいな。提督。」

ポプランは明らかにテレを隠しているアッテンボローの、やや子供じみた様子に笑みがこぼれた。

そういうところはかわいいよなと恋の履歴を多く重ねたツワモノも思う。闊達な青年としての魅力と、

わずかにシンクロするこのトーン。ちょっとだけ似てるところがあるのかもとポプランは思う。

ときどき悪童のようになるところが。

「お前さんの給料でずいぶんいい酒を買ってきたんだな。」

アッテンボローはまだヌードルをもぐもぐと口に詰め込んで、冷やしてあるボトルに手を伸ばしかけた。

「だめですよ。ヌードル程度と一緒に飲む酒じゃないでしょ。さっさと飯食ってください。あんたは子供

ですか。」

せっかくの高級なシャンパン。テイクアウト風情と同列に並べられたくないポプランはアッテンボローの

腕を押さえた。






腕をつかまれただけ。

眸が交差して。

やっぱり余裕なんてなかった。

ポプランはアッテンボローの髪に触れて、やさしいキスを落とした。

少し唇を離してじっとアッテンボローの顔を見つめた。

アッテンボローもポプランの眸と唇を見つめて、うつむいた。

「・・・・・・飯くらい食わせろよ。昼から食ってないんだから。」

いつまでも。

「子供みたいにだらだら食べてるからです。いつまでも待ってられませんよ。・・・・・・・あなたのこと、

好きですから。」

そういわれてアッテンボローはうつむいたまま、わかってるとつぶやく。「それはわかってる。」

つぶやきながらはしをおいて、テーブルに食事を残し、食卓をたってポプランが座っている横に立った。

「・・・・・・ちゃんと食べたほうがいいですよ。提督。夜は長いんですから。」明日も一緒にいられるしと

ポプランが小さく微笑んだらアッテンボローはハートの撃墜王殿の腕をつかんだ。

「・・・・・・なんか、飯の気分じゃない・・・・・・。」アッテンボローはポプランのシャツの袖をつかんだ

まま自分で言って顔を赤くした。

俺って、おかしいのかなと。









ふたりでおかしくなっちゃいましょ。

今度はさっきとはまったく違う、熱い接吻を交わす。

どちらからともなく甘い吐息が漏れた。啄ばむようなキスから互いの舌を求め合うキスへ。ポプランは

アッテンボローを抱きしめ、アッテンボローは戸惑いがちに腕を背中に回した。

「・・・・・・あ、んっ・・・・・・・。ああ・・・・・・。」ポプランがキスが上手、というよりもアッテンボローとて口には

出さないけれど・・・・・・。

オリビエ・ポプランが好きだった。

今この瞬間も。



腕、首に回してしっかりつかまってくださいねと、頭がぼおっとする中でアッテンボローは聞いて

いわれたとおり背中から・・・・・・思った以上に広い背中から首に腕を巻きつけた。

その合間もキスが止まらない。

気がつくとアッテンボローは自分より3センチ高いだけのポプランに横抱きにされている。これでは

女みたいだと文句を言いたいのに・・・・・・ポプランの唇の感触が、恋しい。

何もいえないまま寝室に運ばれた。「あ、あのな、ポプラン。」ベッドに横たえられていつの間にか

組み敷かれたアッテンボローはつい、緊張してどもった。

心地よいポプランの体の重さを味わいながら。

そのぬくもりを次第に脱がされていく素肌にじれるほど、感じながら。



「今夜はゆっくりはじめての夜を過ごしましょ。提督。いやだ、と思った時点でストップしますから

言ってくださいね。」一生分の自制心を使ってとめますから。あふれんばかりの、愛情を費やして。

その言葉に安堵して、ほとんど裸に近いアッテンボローが頷いて・・・・・・。

「・・・・・・電気は消せ。」と顔を背けている。耳もほんのりと桜の色のようで本当なら光の中で彼を

見たいと思っていたけれどポプランは快く了解した。

「お互い、初めてですからね。」

いつもの小粋なウィンクを見せてルームライトを落とした。



始まりの初めて。

暗闇であろうと。

ポプランはアッテンボローの髪を愛しげに撫でながら、唇を合わせた。もう一方の指がアッテンボローの

首筋から、胸をさまよう。闇の暗さに目が慣れてきて指を這わせているときアッテンボローがどんな

表情をするのかが見えた・・・・・・。

唇をぎゅっとかみ締めて、目蓋をぎゅっと閉じて。

けれど肌は正直で、しっとりと汗ばみまた二人の体の隙間を埋めてゆく。



「・・・・・・声、聞かせてくださいよ。提督・・・・・・。」

執拗にアッテンボローの平らかな白い胸を愛撫して、唇が離れてるときポプランは赤く染まった

耳元にささやく。指は小さくとがった胸のつぼみをなぶり、愛でる。年長の恋人は敏感でポプランの

腕の中で身をしならせた。

「・・・・・・・や、ぁ・・・・・・・っ、あ、んっ・・・・・・・・。・・・・・・馬、鹿。俺だけ・・・・・・・あぁんっ・・・・・・・

はずかし・・・いだろ。」

自分の指をかんで声を出さないようにしているので、ポプランは唇で唇を封じた。

「ん・・・・・・・っ・・・・・・。」

アッテンボローの切なげな喘ぐ声にポプランは欲情もし、不思議に愛情も感じた。



firsttime。

こんな気持ちは初めてかもしれない。

数多の女と恋をし、夜をともにしてラブ・アフェアを愉しんできたけれど。

愛しさとは無縁に近かった・・・・・・。どんな唇よりアッテンボローの唇がポプランを惑わす・・・・・・。

「愛してますよ・・・・・・。」

接吻けを交わしながら合間合間にポプランはアッテンボローにささやく。

くぐもった声がアッテンボローの心にじりじりと火をつけ・・・・・・・本人は気づかぬうちにポプランの

名前を繰り返していた。

その反応にもう、止まれって言われても無理かもしれないと撃墜王と呼ばれる男も観念した。



まだ、始まったばかりなのに。

唇を離してほの暗い室内で腕の中のアッテンボローをじっとポプランは見つめた。けれど指はまだ彼の

やわらかい肌を、胸を、首筋をいったりきたりしている。

「大丈夫、ですよね・・・・・・?まだ、始まったばかりですけど・・・・・・不愉快じゃないですよね・・・・・・。」

ポプランはアッテンボローの首筋に唇を這わせながら、ナンセンスな質問をした。

馬鹿。

「・・・・・・やめろなんて・・・・・・ぁんっ・・・言ってないだろ・・・・・・馬鹿。」

アッテンボローの内奥にポプランへの思いが募り、自然と体を寄せてポプランを抱きしめた。首筋から

降りてくる唇がまた胸を攻める。

「ぁあ・・・・・・や・・・っあ・・・・・・」お互いの脚がお互いを戒め、絡み合う。二人の中心が硬くなっている

のがよくわかる。胸のつぼみを舌で転がされてアッテンボローは体をびくんと震わせた。ぴちゃ、ぴちゃと

隠微な音が部屋に響く。熱にうなされるようにポプランの名前をアッテンボローは呼んだ。

やっぱり、止められるものじゃなさそうですとポプランはもう一度アッテンボローの唇をむさぼった。

花に誘われる蜂のように。

蜜より甘い唇。

息を弾ませてアッテンボローは薄らと目を開けてみる。

赤めの金髪に指を入れ、ポプランの頭を引き寄せ、緑のきらめく眸を見つめて視線を唇に移した。

二人で・・・・・・。



「・・・・・・二人でおかしくなろうって言ったのはお前じゃないか・・・・・・。」と今にも泣きそうな表情で

ポプランを誘った。男にしては細い腕がポプランを抱きしめ熱い肌を寄せて接吻けた・・・・・・。

もう止まれない・・・・・・。

アッテンボローからのキスでポプランのわずかな理性など壊れた。

狂うほど唇でアッテンボローの白いからだのいたるところに赤いしるしをつける。

「ああ・・・ポプラン・・・・・・ぁ・・・あっ、あっ」

この人を愛してる・・・・・・。俺は確かにこの人を愛してる。次第に嬌声に似た声をあげてポプランに

しがみつくアッテンボローを、本当に愛しているんだと・・・・・・。



まだ始まったばかりのキスと愛撫で、ポプランは確信した・・・・・・。






3へ続きます。





ああ。2で終わるはずなのにスキルがない・・・・・・。

でもここで終わるとだめだって思う自分です。今回のテーマは「濃厚」。

それでいいのか私。