first time・1
今夜にはもとの部屋に戻るけれどどうせお前のことだから。
「・・・・・・俺の部屋に今後来る気があればキーカード、渡しておくけど。」
来る気がないならやらないと、素っ気なくアッテンボローは言ってのけた。初めて「男」である
ポプランに接吻けされてアッテンボローはそれを、不愉快どころか不本意ながら心地よいと
認識した。
青年提督はその夜、二週間の隣人を「恋人」に格上げした。
そして幾分不機嫌そうに取り繕ってアッテンボローはポプランの目を見ないで、言った。
・・・・・・ティーンエイジの女の子じゃあるまいにとオリビエ・ポプランは、あえてすねた風を装う
青年提督がとてつもなくかわいく思えて、彼のほほから、細面のあごをやさしく指でなぞった。
そして白い首筋に・・・・・・。
「鍵、ください。俺だけに。」
もう一度、初心な年長の恋人に優しいキスを。
27歳の青年だけれど、どこか16歳の少女的な部分もあるがゆえに、壊さぬように恋の勇者
といえども慎重に・・・・・・大事に・・・・・・。
せっかく、腕の中に抱くことを赦してくれたのだから。
大事にしないとむくれて誰の手に落ちるかわからぬ、かわいいひとだから。
背中に回されたアッテンボローの腕。
唇を合わせることに必死になっている彼は腕をぎこちなくポプランの背中に回している。
そんな稚さ(いとけなさ)すらポプランの心に「あたたかい何か」を満ち溢れさせる。
勇者も徐々に余裕も無くし夢中でアッテンボローの唇をむさぼった。コンマわずかの理性で
乱暴にならないよう細心の注意を払って。アッテンボローの髪に指を入れて首を抱き寄せて
深い接吻を交わす。
ぴちゃぴちゃと互いの唾液が交じり合う音が静かな真夜中、部屋中に響き渡る。
またその音の淫猥さが引き金になり、晩生(おくて)なはずのアッテンボローでも気持ちが異様に
高ぶってしまい、はじめは戸惑いがちだった唇も、舌も・・・・・・そして体ごと何もかも素直に、そして
なまめかしくポプランにゆだね・・・・・・求めていた。
さて。
初めて(firsttime)は、何事においても重要であるとポプランさんは常々考えていた。
最初の経験がよいものであれば、まずまず後々円満にゆく。
特にアッテンボローは恋愛経験が乏しい上に、男の自分と愛情を交わすことになる。
自分も男とイタシタことは無いけれど想像は容易にできるし、ならばなおさらアッテンボローが
いとしいひとであるから、苦しい思いや不快な思いはさせたくない。
性の快楽と愛情が頭を支配しようとポプランさんはある部分で「冷静に考える必要」があった。
このまま。
いいムードになっているアッテンボローとfirsttimeを迎えるのも悪くない。
だが、はるかなる記憶を手繰り寄せればポプランは明日、早出で訓練をつけることになっている。
サボタージュを試みることは勤勉なるいとしのアッテンボロー提督が赦すはずが無い。
0600時にはポプランはきっちり訓練用にパイロットスーツを着てひよこさんを相手に仕事にせいを
出すことになるであろう。
となると。
現在0234時。
そんなわずかな時間で二人のfirsttimeを完了させることは、アッテンボローには相当つらいものが
あり、それはかわいそうだと思う歴戦の恋の勇士は思うのである。
濃厚に舌を絡め合わせて、アッテンボローのジャケットを脱がして、ネクタイをするりと解き、シャツを
はぎかけて思うのである。
白く・・・・・・そっと指でなぞるとアッテンボローは「ん、・・・・・・んん・・・・・・。」と扇情的ともいえるあえぎ
声で背中をそらす。
とてもよい感度で。
キスの呪縛をといてポプランはアッテンボローの首筋に舌を這わせた。
「ゃ・・・・・・だ・・・・・・・っ、ん・・・・・・・。」
ヤバイデスとポプランの脳の中枢に指令が下った。
「提督、今夜はここまでにしましょ。」
はだけたシャツから男にしては白く細い肩が露出して。
とても眺めはいいのだけれど・・・・・・これ以上今夜進むとちょっとまずいとポプランさんは「非常に
強い意志」で上気したほの紅い頬と、とろけるような翡翠色の眸の恋人の着衣を正しはじめた。
「・・・・・・なんで。」
そうつぶやいたのはアッテンボロー。
彼は自分が女性とさほど交際した経験も無ければキスから先の経験も少ないと自覚している。
目の前にいる紅めの金髪をした「自称撃墜王」は急に情事をやめて、アッテンボローの着衣の
乱れを直していた。
・・・・・・キスがまずかったんだろうかと変に勘ぐるアッテンボローにさすがポプランさんは気がつかぬ
はずが無い。
熱く、狂おしく抱擁。
「提督、勘違いしないでくださいね。行為を中断したのには海よりも深く空よりも高い理由があるんです。
俺だって・・・・・・。」
できるならばこのままあなたを抱きしめて眠りたい・・・・・・。
さすがにすりすりと頬ずりされるとアッテンボローは、ポプランにきつく抱きしめられてもがいた。
「何だ、気色悪い。こら、離せ。」
「だめです。しばらく抱きしめたいです。」
「苦しいんだって。この馬鹿力!」
「大丈夫。死なせはしません。」
「死んでたまるかっ。馬鹿野郎。」
あのねとポプランはアッテンボローの耳元でささやいた。
・・・・・・耳元は卑怯だよなと、青年提督は先ほどの自分とポプランの接吻けと愛撫を思い出し
いまさら、恥ずかしさが増した。
「提督、俺が働かない軍人だったら嫌いでしょう。」
以外にまじめなポプランの声にアッテンボローはふと、だまり。
「うん。まあ、どっちかといえばやだな。お前は仕事できる男だし。」と答えた。
「今朝俺、早出なんです。0600時にはパイロットスーツ着て訓練室にいかないといけないんですよ。」
まだ話がよく見えない。
アッテンボローはあてずっぽうで聞く。
「睡眠がほしいんだな。」
不正解です。
「睡眠くらいどうってこと無いんですがね。・・・・・・何事も最初が肝心と古来から言いますよね。
提督。」
提督と、俺。
初めて体を重ねるんですよ。
至極まじめにポプランが言う。
「そんな恥ずかしいこと改めていうなってば。いちいち文言にせねば気に入らんのか。お前は。」
アッテンボローはさっきの自分の乱れ方を思い出し、耳まで紅く染めた。
いや、それはともかくですねと、ポプランはそのおいしそうな耳朶をあまがみしつつ、ささやく。
「初めて肌を合わせるには時間が少なすぎるということです。提督がなれるまでの時間をおおよそ
考えてみたんですけど・・・・・・。」
色事の達人ともなると。「たゆまぬ研鑽が入用なんだな。」とアッテンボローは揶揄した。そうほめないで
くださいとポプランはしれっというので、「あざけってるんだ。」と真っ赤な顔して青年提督は大声を
あげた。
「だってね。俺のコックをあなたのアナルに入れるんですよ。あなた、お尻の穴はどう考えても処女
でしょう。ローションだとかの潤滑剤も今この部屋にないし準備が必要でしょ。挿入の準備。」
だからその直接的なものの言い方はやめろとじたばたポプランにホールドされながらアッテンボローは
怒鳴った。
じゃあ。
「じゃあね。屹立した俺の「pocket monster」をあなたの「red-eye」にインサート・・・・・・。」
やかましいとアッテンボローはいわれた単語はわからないが何を言われているかはわかったので
ポプランの足を蹴った。
あいてててて。
「いや、つまりね。愛情が募ってお互いほしくなって止まらなくなっちゃうと・・・・・・いたいのは
提督なんですよ。わかります?もしかして俺とは純愛路線を目指しておいでだとは聞きたくないん
ですが・・・・・・。この物言いならいかがですか。」
本気ですねを蹴られたのでポプランはやや顔をゆがめてアッテンボローにささやいた。
・・・・・・。
「・・・・・・いや、それは・・・・・・ないと・・・・・・思う。別に今更プラトニックでというつもりは・・・・・・。」
アッテンボローがしどろもどろになっている。
提督。
「俺のこと、ほしくないですか。」
「いえるか。色ぼけ。」
「素直じゃないなあ。でも、愛しています。」と唇をとがらせたアッテンボローに接吻けた。
痛いのは。
「痛いのはいやでしょ。というか俺がいやなんです。そういうのが愛情だと勘違いされてせっかく
心が触れ合えたのに離れるなんて絶対いやですから。」
「・・・・・・・俺一応軍人だし、痛さにはある程度訓練で慣れてるんだぞ。」と制服組のアッテンボローが
言い張っても説得力が無い。
大事なfirsttimeは。
「あなたと俺と二人時間があうときにしましょう。そして、ゆっくり、たっぷり愛をはぐくみましょう。」
ねーとポプランはアッテンボローの目の前でにっこりと微笑んだ。
「・・・・・・そういうものかな。」
「そういうものです。今夜は・・・・・・。」
お願いだからこのまま俺の腕の中で眠ってください。
「あなたを抱きしめたまま朝まで眠らせてください・・・・・・。いやですか。」
静かにきらめくグリーンアイズを見つめて、アッテンボローは・・・・・・こっくりとうなずいた。
ジャケットだけ脱がせてシャツ姿のアッテンボローを大事に抱きしめて、ポプランは眸を閉じた。
アッテンボローも・・・・・・ポプランの匂い・・・・・・そう悪く感じないかすかに香る汗とポプランの
体の匂いに包まれて・・・・・・。
「・・・・・・ま、そういうものなら、寝よ。」といって抱きしめられるまま、安心したように体をポプランに
預けてまぶたを閉じた。
目が覚めたときには1人、ポプランのベッドで眠っていて。
キッチンにはベーグルとオレンジジュース。ヨーグルトが用意されていた。
「一生分の理性を費やしてあなたの眠りを妨げないでいきます。でも次に会うときはあなたは俺のもの
ですし、俺は確実にあなたのものですから。」
などという不届きなメモが残っていた。
2に続く。
ついつい前作でうっかりポプランさんの勤務時間をはやくしていたので
初めての夜には似合わないなと思っていたのでこんなシリーズが。
英語圏で「pocket monster」っていうとやばいのでいっちゃだめだそうです。
ポケ●ンとは違うので素直にポ●モンというほうがよいらしいです。
本当かしら。
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