君の吐息は僕の媚薬・2






2200時。



アッテンボローはただいまと帰ってきた。ここは彼女の将官用のへやだからわりと広い。



基本的に司令官のヤンと部屋のつくりは変わらない。玄関ホールがありここもそこそこ広い。単身者の

アッテンボローには大仰に思えるときもある。もっとも彼女が単身者なのか今ひとつなぞではあるけれど。

そしてダイニングリビングがある。ここで食事を取ったり酒を飲んだりする。図書室と談話室をかねた部屋も

あるが彼女は読書家ではないから相方が蔵書をここに収納してはときどき読んでいる。

まともな本が多いので多少驚いた。書斎。ここで主に彼女は執務の続きをする。寝室、客用の寝室。

けれど使われるのは彼女の寝室のみ。



なぜかもう一つ寝室がある。



ヤンの家ではユリアンが寝ているのであるが、アッテンボロー家では誰も寝ない。



ときどき掃除をしないと痛むのでするけれど使わない。二つのバスルームと二つのトイレット。

これも彼女たちには不要。そして広い部屋がもう一つ。ともかくユリアンも驚いていたが

シルバーブリッジの官舎よりもスペースがある。納戸もちゃんとある。



「左官の部屋と違うよな。」とポプランはいうけれど彼の部屋だって十分広い。

帝国の作った要塞で帝国軍人は基本的にプライバシーを重視したのであろう。



「お帰り。ハニー。飯を食うか。風呂に入るか。具合はどうだ。」



シャツとジーンズ姿で待っていたポプランから玄関ホールで熱い抱擁とキスを賜る。・・・・・・アッテンボローの

日常である。



「おなかすいたな。おやつ食べないからさ。何か作ろうか。お前もまだだろ。体は多分まだ男。」

アッテンボローは男なんだけれど、男のポプラン少佐は全然変わらぬ愛情を注いでくれる。

ふんだんに。惜しみなく。



「お前が作ったシチューがあったから温めてるぞ。鮭と野菜をホイル焼きもした。コンソメスープ。

ほめて。ハニー。一緒に食おう。」

「さすが少佐はいい男だね。到底私はかなわないな。姿かたちは男になっているものの。お前のような

伊達ものにはなれないと思うな。」

といってそっと唇を重ねた。

「さ。ご飯食べよー。」本格的なキスをしようとするポプランから逃れてアッテンボローはジャケットを脱いで

持ち帰った書類を書斎に置いた。アッテンボローはときどき思い出したように照れ屋になるときがある。

一応トイレットに駆け込んでみたけれど。胸がないのだし、やはり

男のまま。手を洗って出てきてため息一つ。



「あんまり気にするなよ。いつ戻るかなんてわからないし。一喜一憂してもつらくなるぞ。おれはお前が

男でも女でも愛してる・・・・・・。」

それはそうなんだよ。とアッテンボローは男が作ってくれた料理を並べる。



「私はさ。女の子って好きなんだ。男よりかわいいしいいにおいもするし。そこはお前もそうだろ。」

ポプランは話の展開が急展開するアッテンボローにはなれているので、うん。と同意した。

皿を並べ席に座ったアッテンボローがいう。

「女だったころはさ。口説かれたり・・・・・・まあそれなりになぜかファンがいたんだよね。よくわからないけど。

でも男性心理ってまだかわいいなと思ったんだ。・・・・・・今日髪切っただろう。なんかうちの執務室にメール

だの手紙だの来て。・・・・・・女なんだよ。詐称してなければ女なんだって。差出人。」

着席したポプランは、お前はかわいいからなという。



「手紙とかメールが今日で2500通来たよ。「アッテンボロー提督の恋人になりたい」とか。「ファンクラブ」とか

できてんの。できてるらしいの。・・・・・・私、女なんだけどな。」



・・・・・・2500通。一日にして、ポプラン少佐の華麗なる女性履歴をぬきんでてしまいそうな男の

アッテンボローである。



「ラオなんか余計な仕事が増えてさ。文句は言わないけどからかうし。女の子、かわいいと思ったけど

ちょっと恐いよな。一時間残業だけで済ませられるはずが終わんなかったもん。・・・・・・女に戻ると

通常業務に戻れるかなと。女の子のこういう熱狂って・・・・・・ま、いいや。いただきます。」



おいしいねと満面の笑みでアッテンボローはいう。



彼女の腹時計は至極正確で遠足以外で「おやつ」を食べない。朝、昼、晩と食べる。

そしてわりと綺麗にたっぷり食べる。甘いものはつくるけれど食べるとしたらやはり食後のデザートに

するだけ。それも人が来ればの話で自分だけのときは、甘いものもそう食べようとしない。

それが太らない基本だろうなと。



というかそりゃもてるだろうな。とそっちを気にするポプランである。前回男になったときは彼女は仕事を

休んで外にでていない。男の姿をみているのは数人。今回は違う。しかも髪型が・・・・・・ますます男であれ

女であれ「かわいい」のである。

アッテンボローは怜悧な面立ちの美形で。笑うとそばかすがとても魅惑的で。髪型が現在短めのボブで

適度なシャギーが入っている。・・・・・・女性が放置するはずがない。なるほどなとポプランは思う。

中性的な魅力というものはわりと万人が好む傾向にある。



「・・・・・・これ以上は食べないほうがいいよな。」

アッテンボローは食事が早いときもあればゆっくりなときもある。仕事中ははやい。プライベイトではゆっくり

よく噛む。見る間にいつもの一人前を平らげた。

「・・・・・・男だから腹がへるんじゃないか。まだあるから食えばいいじゃん。」とポプランはいう。

「・・・・・・へってるというか。なんだろ。男の体ってなれないからかな。疲れたというか。」

「それは具合が悪いというやつじゃないか。」



そうじゃないんだとアッテンボローはいう。

「いや。きっと気疲れのほうが多いんだろうと思うな。またあんな手紙の山がと思うとね。食欲の問題じゃ

ないな。うん。いいや。寝れば治るだろう。」

「酒よりなにか・・・・・・牛乳を温めようか。それを飲めばよく眠れると思うぜ。」

「・・・・・・私は今年29歳になるんだ。熟女なんだぞ。」

ふうんとポプランはテーブルにひじをついて恋人の顔を見る。・・・・・・まだまだ幼い顔してるくせに。

何が原因で疲労しているのかわからないが・・・・・・疲労か。





ポプランは全く悪気がない。

むしろ軍医が言った「疲労回復の薬」を自分が持っていることを思い出した。

ちゃんと医者からも「疲労回復によい」といわれたし、体に無害だという。






「疲労回復薬があるけど飲む?怪しいものじゃない。軍医に見せたし。」

ポプランは小瓶をみせた。それを手にとってアッテンボローは中の液体を見る。



「疲労回復薬・・・・・・って入手経路は。薬は好きじゃないんだよ。知ってるだろ。」

入手した経路を話して医者にみせてその医者から「媚薬ではなく、単なる疲労回復薬」とお墨付きをもらった

ことを話した。アッテンボローは小瓶をあけて瓶の口に少し鼻を近づけ手であおる。

「・・・・・・なんかあれだな。漢方のにおいがするな。確かに毒ではないみたいだ。」

「でも不信なら飲まなくていいぞ。やっぱり薬は飲まずにいれれば、それに越したことはないだろ。」

ポプランは手をのばして小瓶をとろうとした。

「・・・・・・咳止めシロップみたい。」と少し舐めた。

「舐めたな。ハニー。やっぱり返せ。なんかいやな予感がする。」

とポプランがいう前にアッテンボローは一気にその小瓶の液体を飲んだ。量にして20ミリ程度。

「・・・・・・あれだ。栄養ドリンクみたいなものだな。ちょっと生薬(きぐすり)くさいけど。飲んだよ。」



・・・・・・。


「ま、いっか毒でもないし医者が疲れにいいといったのも事実だから。薬が嫌いな割りによく飲んだな。」



皿を片付けようと席を立つアッテンボロー。ポプランは食事を済ませて食器洗いはするからとたちかけた

アッテンボローをダイニングリビングに座らせた。どうせ食器洗い機がある。性能がいいので手洗いよりも

落ちるけれど、アッテンボローは「皿を洗っているとほっとする」というので彼女はあまり使わない。



「入手経路はともかくバーソロミューはいい医者だと思うし。あいつが大丈夫というなら大丈夫だろう。」

キッチンでアッテンボローの言葉を聞きながらポプランはさっさと食器を機械に入れていく。

これでいいなと思い、自分には珈琲、彼女にはホットミルクでもと用意する。



「ミルクでも飲め。きっと元気が出るぞ。ハニー。風呂に入ったら寝ようか。」

マグカップを受け取ったときのアッテンボローの目がやけにまぶたが落ちそうだからポプランは

大丈夫かなと思った。



「・・・・・・熱い。」

アッテンボローが呟く。「そういうのはさましながら飲むんだぞ。おれがふーふーするのか。甘えんぼ。」

とアッテンボローの前髪をくしゃくしゃと撫でた。



「・・・・・・その熱いじゃなくてさ。ま。いいや。ホットミルクを飲むとぽかぽかしてくるよね。」

熟女のせりふではないなとポプランは微笑んでその様子を見つめた。



今夜は風呂にアッテンボローを入れたら寝かせてやろうとポプランは思う。

「性転換」が著しく彼女に悪影響を与えてはいなけれど疲れた様子があるというのはよくないし。

早い時間だし今日は自分は本でも読もうと思っていた。「行政解剖学」の本をかってまだ読んでいない。

ああいうのを読んでいるのを他の人間に知れると・・・・・・コーネフ以上におかしいと思われるから

彼にとってはトップシークレットであった。ともかくアッテンボローの体が一番大事だし、休ませるのが

ベストでまだ明日も具合が悪ければ医者に見せようと考えていた。



「オリビエ。」

食卓の椅子に腰掛けているポプランの隣にアッテンボローが立っている。

「なんだ。風呂はいるか。一緒にはいろ・・・・・・・。」

アッテンボローはポプランの口をふさいだ。やや濃厚なキスで。

ポプランは歴戦の勇士だから突然キスされようが舌を口内で絡められたところで、異存はない。

けれど今夜のアッテンボローのキスは濃厚だ。



かなり濃厚だ。





唇がはなれてもふたりの間に唾液がつと伝い。



アッテンボローはポプランの首にしがみつき荒い呼吸をしていた。



「・・・・・・ダスティ。どうしたんだ。苦しいのか。えらく息が上がってるな。気持ち悪いのか。」

心配して背中をさするとアッテンボローの体がポプランの腕の中でびくっとはねた。

「や・・・・・・ん。」



・・・・・・。これは具合の悪いときの反応ではない。



「・・・・・・たってられないよ。ね・・・・・・あつい・・・・・・服、じゃま・・・・・・・。」

すとんとポプランの足元に座り込んだアッテンボローは熱いといって、制服のネクタイをはずしシャツの

ボタンをゆっくりはずした。

「おい。ダスティ。脱ぐのはいいけどそんなところに座りこむなよ・・・・・・えーと。気持ちが悪いんじゃないん

だな。」そんなポプランの声を聞きながらこくっと頷くアッテンボローは顔を上げた。



目のふちや頬が上気して眸はとろんとしてポプランを見ている。

ポプラン少佐は歴戦の勇士だからいきなり「いたされる」のは趣があってよいとは思っている。

しかしいつものアッテンボローではないあだっぽさにややどきりとする。



「ちょうだい。」



もどかしげにポプランのジーンズのボタンをはずしてジッパーを下げた。歴戦の勇士だから・・・・・・

アッテンボローがポプラン少佐のローライズボクサーパンツを脱がせようとしていても・・・・・・

大丈夫なわけがない。



「ハニー。えっと、おれがぬげばいいわけ。」

「やん。お尻浮かせ・・・・・・・て・・・・・・・。」



ダイニングリビングでとはダスティ・アッテンボロー初の大イベントである。

ポプランはいわれたとおり椅子から腰を少し浮かせた。



アッテンボローはおぼつかない手でゆっくりとポプランのボクサーパンツを下ろした。鼓動が早くなり

細い指でポプランの腰をつかんで椅子に座らせる。次にアッテンボローはポプランの靴を脱がせて投げた。

もう片方も同じ。靴下も脱がせてジーンズごと剥ぎ取った。すでにエレクトしているポプランのものを

手にとってじっとアッテンボローは見つめる。



ぺろ。



片手で恋人のものを手にして、もう片方の手で自分のバランスをとるために床に手をついている。

ポプランのものをアッテンボローは舌で舐めた。

う、と声を漏らしたのを耳にするとアッテンボローも、より体が火照り唇をつけて音を立てて

舐めたりキスをしている。はあはあと肩で息をしながらも、恋人のものを一心に口で愛撫する。



「・・・・・・ダスティ・・・・・・。」

ポプランはやさしくアッテンボローの髪に指を入れて撫でる。

「ん・・・・・・。んん。・・・・・・・ん。」

夢中で舌を這わせ先端を嘗め尽くし、のどの奥まで彼を飲み込もうとする。



「・・・・・・きもちいい?・・・・・・。」時折上目遣いでアッテンボローがポプランを見つめた。

「・・・・・・ああ。気持ちいい・・・・・・。ダスティ、愛してる・・・・・・。」

わたしも、といっているようであるが口の中に彼をほおばっているのでうまく言えない。

アッテンボローの舌の動きと手を使われてポプランは放心しかける。







「・・・・・・もう、でる・・・・・・・。」

荒い呼吸でポプランは言う。

アッテンボローはその声に欲情してさらに執拗に手と口で愛撫しつつける。

すぐに口の中一杯に精液があふれ出して、何の迷いもなくアッテンボローはそれを飲み干した。



こくん。



飲みつくしてもまだ丁寧に嘗め尽くしている。唾液と体液で光るポプランのものにやさしいキスをする。

アッテンボローはうんしょといいながら、ポプランの腕につかまって彼の膝に対面した形で座った。

「・・・・・・オリビエ、だいすき・・・・・・。」



呼吸が荒いポプランの口に唇を重ねた。ポプラン少佐は歴戦の勇者だから「発射後」であれ恋人のキスに

応えることができる。くちゅという体液の混ざり合う音、粘着質な音を響かせてアッテンボローはポプランの

唇をむさぼる。そんなアッテンボローはシャツの前を肌蹴させて自分の制服のボトムを脱ぎにかかっている。



「・・・・・・どうしたんだ。今日は。ダスティ。」

「・・・・・・わかんないけど・・・・・・。」



アッテンボローは何とか自分の着衣を取るとシャツを羽織っただけの姿でポプランにまたがった。彼の

シャツをしたからめくり上げ綺麗な体に唇を這わせた。

ポプランは小さくうめいて、アッテンボローのものを乱暴にならぬように手でしごいた。



「愛してる・・・・・・。オリビエ。」

目じりに涙をためて突き上げる快楽に耐えている。あえぎ声が明かりのついた食卓に響く。



すっかり恋人を裸にさせてしまうとポプランの顔を細い指でたどり、吐息を漏らしたまま接吻づける。

指は首筋をたどり鍛えられた胸を這い、さまよう。

唇をポプランの耳によせあえぐと、彼にもまたざわざわとした快感が押し寄せてくる。アッテンボローは

腰を浮かしてポプランのものをつかんだ。

そしてゆっくり自分の体の中に彼をおさめていく。



「うう・・・・・・っ。つ・・・・・・。」

「か、かなりきついぞ。ダスティ、つらいだろ・・・・・・。」

ぶんぶんと頭を振るアッテンボローはポプランの首にしがみついて完全にポプランのものの上に

体を沈めた。



「ああん、あん・・・・・・・あっ。」

ゆっくりだった腰の動きがだんだんと律動的になる。男になったときのアッテンボローは痛みと

つらさで腰など動かせないのであるが今夜は違った。声をあげて腰を使う。

それにあわせてポプランも突き上げる。もう手を添えなくてもアッテンボローのものはまた透明な

体液を出し、大きくなっている。





「あっあっ、あん、あっ・・・・・・。う、はあん。あん、あん・・・・・。」

アッテンボローはもう自分が何をしているのかわかっていない様子だったがしっかりとポプランに

しがみついて突き上げられる動きにあわせ腰を動かした。

ポプランはかなり締め付けられた上にアッテンボローの乱れ振りを見てもう限界だという。








「・・・・・・だいすき・・・・・・。」

「いく・・・・・・ダスティ・・・・・・。」



ポプランはアッテンボローの体内で精液を放出して、アッテンボローもまた頂点に達した。

白い体液がふたりを汚した。汗も滴り落ちる。びくびくと体を引きつらせてアッテンボローは恋人の

首に腕を回してしがみついている。ポプランはその細い体を抱きしめ呼吸を整えている。



「・・・・・・ごめん・・・・・・・。」

アッテンボローが呟いた。まだまだ息が荒い。

「なぜ謝る・・・・・・。」

ポプランはやさしく恋人の髪をすく。短くなったけれどまたそれも魅力的だ。

「・・・・・・・愛してる・・・・・・オリビエ。」

ゆっくりとポプランの首から体を少し離して彼の顔を見るアッテンボローの眸は潤みと熱を持っている。

「愛してるよ。ダスティ。最高だった。大胆で綺麗だ。」





「・・・・・・まだたりない。・・・・・・おかしくない?私・・・・・・・。」

真っ赤になってアッテンボローはうつむきねだる。



「ああ。全然足りないな。おかしくない。」

ポプランはアッテンボローの唇に優しく唇を重ねた。



そしてアッテンボローを抱きかかえて浴室のドアを開けた。




  



でるとはっきりいうポプラン少佐。にやり。(いやその。

そこはやはり男らしく。っていうか男らしいです。少佐。(をい。