辺塞の安寧たる一日・後日談




恒星アルテナを中心にいただくイゼルローン要塞は、一定の速度で公転する。同盟軍の若き智将、

ヤン・ウェンリー提督の功によって難攻不落と言われたこの要塞が陥落してより、ほぼ三年の歳月

が経過している。






宇宙歴七九八年十一月になると虚空の女王と呼ばれる安寧の要塞の静謐は破られる。

ラインハルト・フォン・ローエングラム帝国宰相は苛烈で華麗な陣列をもって自由惑星同盟首都星ハイ

ネセンを武力による制圧のもと侵略せんと作戦を発令した。

作戦名は「神々の黄昏」(ラグナロック)。

その日、オリビエ・ポプラン少佐は度重なるスクランブルに苛立ちを隠せないでいた。これでは過重労

働だ。身が持たない。精鋭中の精鋭である彼でさえ疲労していた。部下や新兵のコンディションにも留

意していた。艦載機乗りである以上命令が下れば出撃する。ポプランは職業軍人だからそれは良い。

執拗な波状攻撃を仕掛ける割に翻弄されるようなドッグ・ファイトが繰り返されていた。女を見繕う暇が

無い。

本当のところ女とベッドを共にしたいのか。

本当のところ気になるひとはいる。

縺(もつ)れた鉄灰色の髪にそれをやや濃くしたうすい色彩の瞳を持つ男を時折思い浮かべた。キスの

一つだけでも伝授しようとスパルタニアンの格納庫に連れ出して『博愛精神』の教示と思い唇を重ねた。



ダスティ・アッテンボロー少将。

僅かに舌を絡ませて女を抱くように最も感じるところにそっと撫でると独身主義を唱え房事に拙(つたな)

いはずの男は得も言われぬ欲情を煽る色香のある声をあげた。興をおぼえてポプランはなし崩しにアッ

テンボローを抱いた。情欲が止まらなくなったのである。



お互い愉しんだ筈である。

アッテンボローは打ち付ける度に女よりかわいらしい声で啼いたし突き上げる度、妖しい喘ぎ声を出した。

絶頂に達したときはポプランにしがみつき・・・・・・悪くないとポプランは思っていた。水に流しましょうと情事

のあとに言えば文句をいいながらもアッテンボローは笑みをみせた筈だった。これでおしまい。

後腐れはない。



だが気になる。

アッテンボローとは以後も以前と変わらぬスタンスで付き合いをしている。ポプランからすれば僚友のイワ

ン・コーネフ少佐ほど階級と年齢の差があるから気安く話はできないが相変わらず気の合う上官であり、ひ

ととき肌を重ねた間柄には思えない淡泊さが漂う。それでよかった。別段避けられてもいない。士官食堂で

顔を合わせればたまにポプランは同席して歓談する。二人きりになったとしてもあの不思議な色の眸は変わ

りない真っ直ぐさでポプランをみる。これが水に流すということ。恋愛が不得手でもアッテンボローが成熟した

大人であるには違いなかった。

水に流してくださいと言ったのは自分だから思惑通りにことが運んでいるのだし、今まで通り博愛精神の

何たるかを色とりどりの美女相手に説く。それでいい・・・・・・筈なのだが。



気になる。

男と情を交わせば女に戻れなくなると言うがそういう生理的な欲求とはまた違う。確かにアッテンボローは

愛らしかった。瞼をとじたときに長い睫毛を見て、こんなラブ・アフェアもありだとしっくりきた。ポプランの愛

撫に敏感な反応を示すアッテンボローに余裕がなくなりかけた。

いや。なかった。

感度の良さに胸の奥が焦がれた。欲しいと思って相手が慣れていない情事であろうが固くなった自分をアッ

テンボローに埋めた。きりきりとポプランを締め上げるアッテンボローを必死で抱いた気がする。本当は情

事のあとに乱れて縺れた髪を撫でていたとき心の中であたたかいものを感じた。



「会いたい。」

思わず呟いた自分の声にびっくりした。

聞いたコーネフは毎度のことだからあきれもせず「戦いが終わったら好きなところへいってくれ。静かで

いい。」と素っ気なく言った。

それが会えないから困っていた。また出撃命令が下りた。パイロットスーツを脱ぐ間もない。いたぶるよう

な帝国の攻撃のしかたにポプランだけでなくコーネフも不審と苛立ちを抱えていた。

あのひとに会いたい。

あのひとを抱きたい。

ポプランのいつわらざる心情であった。アッテンボローは今分艦隊を率いて待機している筈だ。いくら会い

たいと思ったところでいざ戦端が開かれると簡単には会えない。






そう。簡単には会えない。






「神々の黄昏」作戦の序章はイゼルローン要塞を戦術的に無力化する「第九次イゼルローン要塞攻略戦」

であり、指揮官は名将と誉れ高いオスカー・フォン・ロイエンタール上級大将であった。単なる陽動作戦に

ローエングラム公は双璧の一人を配置した。イゼルローン要塞には「魔術師ヤン」がいる・・・・・・。

「単なる陽動でよくもまあきまじめに戦いを仕掛けてくれるよ。オスカー・フォン・ロイエンタール。」

絶対友人になれそうもないとアッテンボローは士官食堂にて同じ席で食事をするラオ中佐に言った。

「あちらも閣下とは折りが合わないと言いたいでしょう。」

お互い様ですとしたり顔で言われた。それもそうだとアッテンボローは口角だけをあげて面白くもないのに

笑った。

「どうせただの陽動なんだから少しくらい手を抜いてくれりゃいいのに。ご面相は美男子でもいただけない。

あっちの艦を二〇〇隻ほど沈めたけどこの要塞の浮遊砲台も二〇〇基ほどやられている。それでもまだ

退いちゃくれないでこっちににらみをきかせてるんだからたいした御仁だよ。」

あっちは痛くもかゆくもないんだからな。

「要塞攻略に失敗したふりも上手でしたね。」とラオは珈琲を飲み言う。

「なんでもできて容貌も麗しい人間ってのはいずれ妬まれるに決まってる。なんて言ってみたところで詮が

ない。何らかの策はもう用意しているはずだ。双璧と謳われる人物だ。抜かりはないだろう。」アッテンボロー

は見えない相手に嫌みを言ってみた。自分の上官の子供じみたまねを見てラオは苦笑する。

「閣下、お先に失礼します。要塞事務監に提出する書類がありますから。」

「相手はアレックス・キャゼルヌ少将。ロイエンタールほど美形じゃないがかわいらしさの片鱗がないところ

はうちの事務監殿が上をいくかもしれないな。ご苦労。おれはもう少しここで珈琲飲んでからいく。」



アッテンボローはサボタージュをしているわけではない。



「第九次イゼルローン要塞攻略戦」は終わったわけではなかったが十二月に入った段階でまだなおイゼ

ルローン要塞は墜ちてはいない。これはロイエンタールの計算の範疇であり「第九次イゼルローン要塞攻

略戦」で一時ヤン艦隊が負けなかったことが喧伝されればフェザーン自治領(ラント)の民衆の警戒が弱ま

りそこにラインハルト・フォン・ローエングラムのねらいがある。フェザーンにはウォルフガング・ミッターマイ

ヤー上級大将が侵攻し占領を命ぜられている。現時点でアッテンボローの出番がないのはそのようなから

くりの上のことであった。






「アッテンボロー提督。」

聞き慣れたオリビエ・ポプランの声がしたがアッテンボローは気にとめるでもなくもう一杯の珈琲を飲むか

プロテインドリンクを飲むか考えていた。

「ここであったが百年目ですよ。アッテンボロー提督。」

士官食堂の珈琲はそれほど美味い代物ではないが「トリグラフ」の珈琲はもっと味が落ちる。それならもう

一杯くらい要塞の珈琲を飲んでおこうと思ったらポプランが目の前でなにやら意味不明な言葉を吐いた。

「何を恨みがましいことを言ってる。撃墜王。」

「あなたが欲しいんです。」

さすが二○代で「閣下」になった男である。

アッテンボローはポプランのとち狂った言葉に怖じず動じず。

「あほうか。お前さんは。疲れてるならさっさと寝ろ。おれも部屋で寝るんだから。」

「わかってないですね。こっちはやたらとあなたが恋しくてたまらなかったのに。」



ちょっと待て。

アッテンボローはさめた珈琲をぐいと飲み干して言う。

「こんな人目につくところで話す話題じゃない。そういう話題は歩きながら話そう。」と席を立った。

ポプランはこれは両思いだろうかと心ときめかしたが何しろアッテンボローはその気になれば無表情を装う

ことくらいなんでもない仕事をしているのである。同盟史上もっとも若い提督故にポーカーフェイスはお手の

物。必ずしも色のよい返事をもらえるとは限らないこともポプランは承知していた。

けれど心のベクトルは明らかに自分よりわずかに背の低いだけの青年提督に向かっていた。

「歩きながら話すぞ。・・・・・・お前、何を馬鹿なことをいっているんだ。」



+++



やっぱり。

かなりの確率でポプランはアッテンボローからこういう答えを賜ることは覚悟していた。

「そもそも水に流せと言ったのは貴官だしおれはその通りにしておれはきちんと過ごしているだろう。邪険

にすることもなく僚友として約束通り接している。それがお前さんはなんだ。そんな無粋な男だったなんて

いささか残念だ。」

それはそうなんですけれどねと当の色事師が赤めの金褐色の髪をかき回して唇を尖らせた。

「弁解の余地をください。提督の声が忘れがたくなっちゃって。」

「言うな。恥ずかしい。全然水に流してないじゃないか。ポプラン少佐。それが大人の対応か。お前卑怯

だぞ。」

「そしりは甘んじてお受けします。けれどあなたが欲しいんです。あなたを抱きたい。」

アッテンボローは歩く速度を速めながらポプランの言う言葉に耳を傾けた。予想外の展開で実は内心非常

に困っている。



過日の情事だってアッテンボローは旨く消化できないでいた。

スパルタニアンの格納庫に連れて行かれて確か女性の良さを説かれるはずだったのに目を閉じろと言わ

れて不承不承、閉じたらキスされた。抗ったもののポプランのキスの感触は悪いものではなかった。そう

感じた自分が情けないが結局男に抱かれた。幸いにポプランは本気でなく水に流せと言うから安心していた。

愛情で抱かれたわけでなかったのが妙な話だがこの際はよかったのだ。



もう一度。

もう一度あんな風にポプランに抱かれたら。

アッテンボローは自分のペースを乱されそうな気がしてそこが怖い。心までつながるのが怖い。

「女の愉しみ方はお前さんを見て勉強するとして。もちろん反面教師としてだがな。博愛主義というものは

恋人としては減点対象だからな。だから何も房事を手取り足取り学ばなくてもおれも人並みにその気にな

れば情事もできる。心配しなくていいからあのことはすべて水に流せ。イゼルローンの美しいお嬢さんがた

がお前さんを心待ちにしているぞ。何せこのところ出撃ばかりだっただろう。淑女(レディ)が「きらきら星人」

の色男を待っているぞ。おれにかまわずいけ。」

ねえ。提督。

「地の利ってものがあるでしょ。」

ポプランがにっこり微笑んで言うのでアッテンボローは拍子抜けして首肯した。

「それがどうした。」

提督とあろうお方が。

ポプランはアッテンボローの二の腕をつかんで背後の「公衆トイレット」に青年提督を押しやった。



待てとアッテンボローが言えば、待っていれば抱かせてくれるんですかとポプランは一番奥にある

個室にアッテンボローをいれ自分もするりと入ってきた。

「腕にものを言わせやがって。これじゃ強姦じゃないか。軍法会議にかけてやる。」

キスしたら。

「キスしたらお前のその舌、かみちぎってやる。」

アッテンボローの華奢な顎を持ち上げポプランは煌めく緑の眸を真面目に向けて真剣に言った。

「ええ。わかっています。全て享受します。たとえ生命を落としても・・・・・・。」



あなたの唇にキスできるなら本望です。

ポプランのあのやさしいあたたかで心地のよい唇がアッテンボローにおりてきた。女の子のそれよりも

硬い。けれど吸い付く加減がソフトでアッテンボローは舌を噛み切ることなど出来なかった。セラミック

のトイレットに腰を落とし言葉とは裏腹にポプランを受け入れていた。白く細い指がポプランの腕を掴ん

で離さない。

「ああ・・・ん・・・や・・・めろ。ポプラン。」

アッテンボローは吐息まじりにやさしい唇の主に言う。けれど互いの舌を絡ませて淫猥な音を立てなが

ら熱い接吻を二人とも止めることができなかった。ぴちゃぴちゃと音は更に大きく妖しく響く。合間にアッ

テンボローが息が出来るようにポプランは唇を僅かに離す。それが切ないのかアッテンボローはポプラ

ンにより身体を密着させて、喘いだ。ポプランはアッテンボローの縺れたような髪を撫でてスカーフをする

っと抜いた。男にしては線が細いアッテンボローの白い首筋に指を這わせた。それだけでキスの温度が

上がる。

アイボリーのスラックス越しにアッテンボローを愛撫するとすでにそこは形が成されていた。一気にボト

ムを剥ぎ取って熱を帯びたそこをポプランは優しく、そしてだんだん激しく手でしごいた。

「ん・・・やぁっ、出る・・・・・・。」

「その声・・・聞きたかったんです・・・。」ポプランはそう言うとアッテンボローのものを口に含んだ。

「ば・・・馬鹿、だめ・・・出る・・・んん、我慢できない・・・・・・。」

我慢しないでいいですよとポプランの唇はいっこうにアッテンボローから離れない。そのうちアッテンボロ

ーはびくんと身体をひくつかせた。ポプランの口内に白濁したやや苦い味が広がり彼は戸惑う事なく飲み

下した。

ぐったりとアッテンボローは身体をポプランに預けている。

「・・・・・・飲むな。変態・・・・・・。」

トイレットに座らされて唇をまたポプランと重ねる。彼の背中に腕をまわしてしがみついた。

「片脚、あげてください。」

余裕なんてなかった。

ポプランはアッテンボローの左足を自分の右肩に乗せた。すっかり感じて濡れているアッテンボローの

中に自分のものを挿入する。きつく締め上げてくるのはかわりないが初めて繋がったときよりも奥まで

入れることが出来た。

「やぁんっ!ああっ・・・んん」

アッテンボローは嬌声をあげた。自分の身体が自分でコントロール出来ぬほど繋がった部分がひくひく

とポプランを締め付ける。

「・・・すごい・・・気持ちいい・・・・。」

ポプランは思わずかすれた声を出した。アッテンボローのシャツは既にはだけてポプランが残した印が紅く

染まっていた。アッテンボローはポプランの首に腕を回して自然に腰を動かした。突き上げられるごとに唇

を噛み締めた。身体のなかのポプランが熱く・・・・・・。

「提督も気持ち、いいですか・・・・・・。」

ポプランに耳元で囁かれてアッテンボローは不思議な色の眸を妖しく向けた。眦(まなじり)を朱に染めて

熱に浮されるようにポプランの唇を求めて、より腰を動かした。

肌を重ねて。

コンマ一ミリも隙間を空けたくないほど身体を互いに寄せ合う。汗ばんだ素肌がしっとりと二人を結び

付ける。

やがてポプランも絶頂に達してアッテンボローのなかに己の精を放った・・・・・・。



+++



すぐには言葉が出なかった。第一に二人とも幾度も体を重ねて幾度も到達して甘い疲労のただ中にいたし

第二にはすぐに言葉が見つからなかった。肩で呼吸をしてポプランはアッテンボローの後始末を黙々として

いたしアッテンボローはなすがままされていた。

第三に。ポプランは着衣を整えたアッテンボローに接吻けをした。アッテンボローにはわかった。ポプランが

困ったなあという感情と恋慕を抱いていることが。そして自分もそんな男を恋しいと思っていることを自覚して

キスのあとも言葉が出なかった。

「博愛主義者って恋人として減点ですか。」

ポプランは尋ねた。

「ああ。大いに減点だ。」

「じゃあ諦めるしかないですね。」

その言葉にアッテンボローはそうなることをおそれていた自分を改めて実感した。誰とでも肌を重ねるなんて

芸当はアッテンボローには無理で。ポプランに体を許したのは当然好意以上の思いがあったからで。けれど

それは報われるたぐいのものではないから心まで縛れないことはもちろん承知の上で繋がった。最初は。二

度目は予測していなかったから拒否を試みたが体は自然と男を受け入れた。女性遍歴が浅いと言っても今まで

彼は男と情交などしたことはない。ポプランのあたたかさがなぜか心地よいと思ってしまって唇を重ねたときに

は抗う術を見失っていた。惚れてしまえば負けは見えていた。相手は女性をこよなく愛する男。不特定多数の

女性と一夜の恋に落ちる男。僚友のままでいたかった。だがこの不毛な関係もこれで終わる。少将と少佐に

戻る。それでよかったんだとアッテンボローは思う。






「決めました。女は諦めます。やっぱりあなたが欲しい。おれの恋人になってくれませんか。」

トイレットの個室に沈黙が流れた。「こんな場所でムードのない奴だな。女性殺し(レディ・キラー)さんよ。」

アッテンボローが三秒ほど間をおいてやっと口に出た言葉。「トイレットが問題じゃないでしょう。」とポプラン

は縺れきったアッテンボローの髪をいとおしむように撫でる。さんざん乱れたあとだからおそらく物凄い髪に

なっているだろうとアッテンボローは思いつつ、ポプランの少し骨張った指を心地よく感じた。胸に甘い疼き

が走った。「・・・・・・この世の美しい女性に博愛主義のなんたるかを教えるきらきら星人としての使命は

どうするんだ。」アッテンボローは静かに言う。「きらきら星人も恋に落ちるんです。」ポプランはにっこりと

微笑んでアッテンボローの鼻にキスをした。

「だってあなたって恋愛ではプライドとか高そうだし独占欲も強そうだし嫌われたくないですからね。」

スクランブルがかかるたび。

ポプランはアッテンボローを思い出した。イゼルローン要塞へ帰還するときも浮かぶ顔はアッテンボローだ

った。ただの肉欲かと思ったけれど再び抱いたら違った。



恋してる。

「よく恋愛にてなれた男が初心な女に魂を奪われるなんて物語があるものですがあなたの場合もそれに近い

かもしれません。もちろん積極的に腰を使うあなたも愛しいけれど要するに愛しいなんて発想自体これは恋

でしかないです。」まだあなたのことをたくさん知っている訳じゃないのに恋する。「これからたくさんあなたを

もっと知りたい。チャーミングな女性よりもあなたを目で追ってしまう自分がいるんです。」自分は間違いなく三十

路にならないきらきら星人であるには違いないですけれどね。

「年下のかわいい恋人、持つってのもアッテンボロー提督。きっといいもんですよ。おれは完全にあなたにいか

れてます。あなたはまだまだおれに興味なしですか。」

こんなに愛し合ったあとでさえも。

故郷の森の緑を思わせるきらめく眸にアッテンボローは嘘がつけなかった。





「・・・・・・大ありだよ。畜生。おれにどうしろって言うんだ。この野郎。」アッテンボローの言葉にポプランは輝く

笑みを見せてそっと年長の恋人を抱きしめた。「ありのままのあなたでいてください。ありのままのあなたに

惚れてしまったんだから。」

体から始まる恋。こんな恋もあるものなのかなとアッテンボローはポプランの肩に頭をこすりつけて呟く。

今まではなかったですねえとポプランは言った。「不安ですか。」「ロイエンタールの攻撃より不安だ。」即答

されてポプランはおやまあと呆れたようにおどけた。「でもわかってますか。それっておれのこと独り占めした

いっていっているようなものなんですよ。」とさっと唇をかすめ取ってキスして汚れたものをトイレットの水洗に

流した。

「二人の恋は水には流しませんからね。ただの遊びに終わらせたくないって思ったのってあなただけなんです。

罪作りなひとですよね。提督。」

「知るか。馬鹿。」

ふとアッテンボローは笑った。綺麗な笑顔だなとポプランは観念した。「じゃ、続きはオーソドックスにベッドでしま

しょか。」とさらりと言った。続き?「ちょっと待て。ここでその、何回かやったよな。俺たち。まだ足りないとか言う

訳か。お前さんは。」個室の壁に追いつめられてアッテンボローはポプランに言った。

「もちろん足りません。」「この非常時に何を考えてやがるんだ。」「この非常時だからこそでしょう。こんなにゆっ

くりと恋人と過ごせる時間を寝るなんてもったいないです。」大丈夫。優しくしますから。

「今までは格納庫だとかトイレットだとかややマニアックな場所で愛し合いましたが提督の部屋で愛し合いましょ

う。もっと前戯をたっぷりしてびしょびしょに濡れるまで舐めてあげますから。」「黙れ!馬鹿者。」「今頃気が

ついたんですか。」おれは提督馬鹿なんですよと無垢な少年のようにポプランは綺麗な笑みを見せた。



戦場で生まれた恋。なかなかもってたくましい。ちょっとやそっとではくじけない不屈の恋。オスカー・フォン・

ロイエンタールでもラインハルト・フォン・ローエングラムでも邪魔できぬ愛情。体だけではなく心まで不思議にも

繋がっているこの二人。この非常時にと眉をひそめなかったのはワルター・フォン・シェーンコップ少将とイワ

ン・コーネフ少佐だけであった。「ポプランならやりかねない。」二人そろってそういったとか言わないとか。とど

のつまりアッテンボローにはポプランがいる限り「辺塞の安寧たる一日」など二度と訪れないことだけは確か

であった。



fin



結局私が書くとPはアッテンに猫夢中で惚れてしまう脳内回路になっているようです。

もっと違うPAが書けるかなと手をさしのべて頂いたのにいつもの甘い路線になって

本当にすみませんでした。

ほろ苦いPAとかクールなPAはきっと私には無理なんです。Aは大事にされないとやなんです。

きっぱり。

色んな幅でPA書ける方尊敬します。エロいのかエロくないのかわからないさまよえる作品にして

申し訳ありませんでした。涼本さま。

お目汚しですけれどせっかく書いたのであげておきます。力量がなかったです。反省。