昨日よりも想える自信







バレンタインと言うからアッテンボローは初めて「恋人」のためにチョコレートと

ちょっとした贈物をそえて・・・・・・画材がほしいというので指定された通りのものを

添えて・・・・・・リンツにプレゼントした。

リンツからはチョコレートとアッテンボローの好きなブランデーをプレゼントして

もらって二人で・・・・・・夜を過ごした。



男同士のカップルといっても恋人同士の時間の過ごし方などそうバリエーションが

あるわけではない。広いソファに座って・・・・・・もちろんアッテンボローはリンツの膝の

上に腰を下ろしてくつろぎリンツはアッテンボローの髪を優しく撫でながら普段なかなか

みれない映画を大きな室内ビジョンで見ながらちびりちびりと酒をなめ時々キスを

する。



おいしいチーズやハムを口にしながらまたキス。



どんどん比率が変わってくる。

キスと食べ物を口にする頻度の比率。

キスの頻度が時間とともにましてゆくのも、恋人同士ならではの・・・・・・甘い夜。

あんまり誘わないでくださいとリンツは言ってみた。「ダスティが見たい映画だから

借りてきたんですよ。見たくないんですか。」



言っているリンツ本人は映画なぞくそくらえでアッテンボローの緑青の眸を見つめる

方がよいに決まっている。少し乾いた頬に触れてつややかな唇に唇を重ねた方が

いいに決まっている。



でも一応念押ししておく。

この2才年上の青年提督は我を忘れてリンツをどんどんもとめるようになる。そして

あとになって「あの映画が見たかった。」と言いかねないのだから。そんなこざかしさ

すらリンツにはいとおしくて。



「なあ・・・・・・。」



アッテンボローはリンツのブルーグリーンの眸を見つめて途中まで言う。けれど

そのあと言葉にしにくいらしい。言葉にできないとアッテンボローは猫がそうする

ようにリンツにすりすりと鉄灰色の髪をすり寄せる。

それがどういうサインなのかリンツはよくわかっているけれどついいたずら心が

起きてアッテンボローの耳元でささやく。豊かな奥行きのある声で。



「おねだりですね。」



・・・・・・いじわるだなあとアッテンボローは恋人の耳をつねる。その指先が熱い。

甘く、けれど触れるようなキスだったのに夜が深まるとお互いの唇をむさぼりあう

接吻けに変わる。

こういうのばかりって・・・・・・「なんか俺っておかしいのかな・・・・・・。」とキスの

合間にアッテンボローが言うのでリンツはそれが正常ですと覆い被さって舌を

絡ませた。



キスをしてセックスをして。キスをして。また抱き合って・・・・・・。

それでいいのではないかと腕の中でまなじりを朱に染めてあえぐアッテンボローを

抱きしめてリンツは熱に浮かされたように思う。



この人を愛している。

この人の髪も肌も背中も胸も腕も肩も首も・・・・・・唇もすべて愛している。

快活な青年提督もまっすぐな気性も愛しているし、乱れて艶めく恋人を本当に

リンツは愛している。

汗ばんでしっとりと体に貼りつく白いこの人の肌。熱くて・・・・・・自分が生きている

という喜びをアッテンボローと抱き合うとリンツは・・・・・・思う。



唇や舌、指で肌をいたぶると恐ろしく敏感でふるえてリンツの腕の中で悶える

アッテンボローをかき抱くと心の中にあたたかい何かが満ちてくる。それが何か

は説明できないけれどゆっくりとリンツ自身をアッテンボローの中に沈めて

アッテンボローが感じると思われるところを探していると・・・・・・愛情がわく。

大事にしたいと。

傷など付けてしまわぬようにと。



「やあん・・・・・・あん、あっ、そこ、だめ・・・・・・。やだ・・・・・・おかしくなる・・・・・・。」



アッテンボローの切ないなきごえがリンツの胸を締め付ける。ゆっくり腰を動かして

そのポイントをやさしく・・・・・・そしてだんだん激しくつく。



はぁんっ、やん、あっ、やっ・・・・・・。

上気してほてった体をリンツにすり寄せてアッテンボローは嬌声をあげる。

やだということは・・・・・・「ここがいいんですね・・・・・・。ダスティ。」と耳たぶを甘くかみ

ながらささやくとアッテンボローはぎゅっとまぶたを閉じた。朱に染まったまなじりから

涙があふれている。



・・・・・・そこ・・・・・・。「もっと、もっと・・・・・・カスパー。」

恥ずかしがり屋の恋人が素直にリンツをもとめる。またひとしおにアッテンボローへの

想いが確かなものになる・・・・・・。



この人を愛している。



何度か突き上げるとアッテンボローは果ててそのあとリンツもアッテンボローを抱き

しめたまま汗ばんだ体をすり寄せたまま・・・・・・いった。



少しは。

「感じるようになりましたか。ダスティ・・・・・・。」

体を冷やさぬようにまだ荒い呼吸をしているアッテンボローにシーツの上掛けを掛けて

あたためて抱く。緑青と銀の色が交差した微妙な色の髪を優しく撫でる。この感触すら

えがたいもので。

自分の一番大事なものだと言い切れる気持ちにリンツはなる。

こんなことばかり・・・・・・「こんなことばかりして俺は色情狂なのかな・・・・・・・。」

まっすぐな眸がリンツを見つめる。



だったら。

「俺も色情狂になりましょう。」

恋人同士。

抱き合って眠っても世界は勝手に回っていますとリンツはほほえんだ。

男にしてはやや小さな手を握って。

男にしてはやや華奢な指を絡めて。



もしも未来があるとするならば。

血で血を洗うような戦争屋の自分に幾ばくかの平和な時代が訪れるとしたならば。

明日があるならば。



昨日よりも今日、そして今日よりも明日・・・・・・また一段とアッテンボローを思う気持ちは

強くなるとカスパー・リンツは柔らかなブルーグリーンの眸で2才年上の少し甘えんぼの

恋人を見つめる。

「ダスティはこういうときとっても・・・・・・・愛らしいですね。」

「うるさい。大人の男に愛らしいとか言うな。・・・・・・くそ。」



リンツに口答えをしてみるもののその腕に抱かれる感触がアッテンボローには貴重な

もので。

何度もキスを重ねて。

何度も抱き合って。



そんな二人の、ごく平凡な恋人同士のバレンタイン。



fin

 







RAで一話にまとまったというか山もなければ意味もない小説に

なりました。ゲイのカップルのふつうの恋人たちの夜が書きたかっただけです。

あえてエロはかくして。