少しの余裕も残してやらない

ダスティ・アッテンボローは「アイジン」から「恋人」になった男からよく言われる。
「そろそろ髪を切れ。」と。
「アイジン」時代はそういわれなかったけれど「恋人」に格上げしたら男の図々しさが
さらにました。といっても過分なほどの愛情も入り交じっているようで・・・・・・つまり
ワルター・フォン・シェーンコップとの関係はまずまず良好と当人は思っていた。
いつも会うのはアッテンボローの部屋。シェーンコップの部屋にもたまによるけれど
一緒に暮らしているわけではないので朝帰りが得意な人間にさせた方が賢明である。
それにシェーンコップと過ごした朝はすぐに動き回れるほどアッテンボローはタフでは
なかった。
でも・・・・・・。
イゼルローン要塞の「将官」クラスに与えられた部屋が広い。無駄に部屋数がある。
バスルームもトイレットも二つ。寝室は客室を入れれば三つ。これを事務監に不平を
言えば「お前らが使わなければ佐官や下士官がもっと狭い部屋に行かねばならん。
我慢しろ。」とにべもない。シェーンコップは「余分な部屋に着替えを置かせろ。」と
すっかり一部屋は「恋人」のもの。だったら寝室もそこを使えとときどきは思うけれど
まず、無い。
軍人居住区のシングルベッドが広くてよかった・・・・・・・。
青年提督はそう思う。
「鬼がいぬまにシャワーを浴びておこう。」
今日は彼が先に帰ってきてまだ彼がいない。
今夜はシェーンコップがテイクアウトの食事を用意してくれるといっていた。
アッテンボローが好きなチャイナ・フーズ。
あいつ、おれがヌードルさえ食ってれば機嫌がいいと思っているなとふと苦笑した。
飲茶も好きだけれどヌードルを箸で食べるのがおもしろいとアッテンボローは
思っている。二人でシャワーを浴びるといつもそのまま抱き合ってしまう。
今は少しリラックスしたいからさっさと一人で入ろうと思っていた。
あの御仁とつきあうには体力が必要。
バスタブにも熱い湯をはり熱めのシャワーをあび髪を洗う。シェーンコップは
アッテンボローに髪をきれという。ちょっとのびすぎだと自分でも思っている。
でもふと考える。
こんなに始終一緒にいるのにいつ髪を切りにいけばいいのだと。
また苦笑。
合い鍵があるから勝手にシェーンコップはくる。
玄関を開けた音が聞こえたからあいつがきたのであろうとアッテンボローはそのまま
髪を洗い体を洗い・・・・・・思う存分バスタブにつかった。やつが入ってくるかと思ったが
そうでもないらしい。
・・・・・・。
それはそれで物足りない気分も実はある。
「長湯だな。」
ソファでジャケットを脱いでネクタイをゆるめてシェーンコップが先に水割りを
飲んでいた。静かな音楽を部屋に流して大きめなソファに脚を投げ出している。
頭にタオルをかぶせただけでタオル地のローブを着てアッテンボローは出てきた。
「・・・・・・チャイナ、かってきたよな。」
「・・・・・・かってきいてる。」
この声は・・・・・・ずるいよなとアッテンボローは思う。深みがあって柔らかくて知的で。
声の主も深みがあって柔らかくて知的ではあるけれど時折野蛮で、魅惑的。
こういう男を独り占めしちゃっている自分はこれでいいのかなとアッテンボローはふと
考えてしまう。
・・・・・・いまさら。
殊勝なことを考えてももう、はなれられないのはわかってるのになとまた、苦笑。
こら。
「お前は子供か・・・・・・。こっちにこい。」
ぐいと男にしては細い腰を抱き寄せられてシェーンコップの腕の中に収まっている。
ぼさっとつったってないできちんとタオルで髪を拭かないと風邪を引くんだぞ。
「ママに教わらなかったのか。あまえんぼう。」といいつつもがしがしとタオルで髪を
ふかれた。
無骨な指。いや男の指としてはきれいなのかもしれない。男らしい彼の手。
「・・・・・・。おとなしいんだな。湯あたりでも起こしたんじゃないのか。お前27だろう。」
一目では怜悧な美形という顔立ちなのだがシェーンコップはときどきとても優しい
まなざしになる。
・・・・・・。
「・・・・・・なあ。やっぱり俺はそんなに子供かな。4つしか変わらないんだぞ。」
言った先から唇が触れるように降りてきた。
あたたかな、唇。
なあ。
まだ言葉にできる間に言っておこうとアッテンボローはキスのあいまに
シェーンコップのくすんだ茶色の眸を見つめて言う。
「愛してる・・・・・・。あとはたぶん・・・・・・言葉にならない・・・・・・。」
負けず嫌いなアッテンボローがあえなく降参。いつの間にか大事な「恋人」は
今目の前の彼。
髪を撫でてそばかすを指でなぞりシェーンコップは笑みを漏らした。
「・・・・・・よくできた。満点の回答だ。」
愛してると続きのように触れあうだけの接吻けから舌を絡ませる濃厚な接吻けへ。
ときどきシェーンコップはアッテンボローが呼吸する間隔を与えてくれる。何度キスを
交わしていてもまだうまく息をつぐことができない。
そんな彼の稚さ(おさなさ)さえ愛しさが増す。
キスをされるともうあとはジェットコースターのようだとアッテンボローは思う。
少しの隙間も空けたくなくて必死にシェーンコップを求めている自分。
熱い舌がくちゅっと音をたてながらうごめく。それを追うのに必死。
やっぱり最初に言葉にしておいてよかった。
ここまでくると「愛してる」と言葉にならない。
濡れた髪に指を入れしっかりとアッテンボローの頭を捕まえる。
バスローブ越しですらシェーンコップはわかる。
アッテンボローがどう感じているか。
キスを交わしながら固く結ばれた腰の布をほどく。
部屋は丁度よい室温にしているからとあらわになる白い肌に指をはわせる。
感度の高いきめの細かい肌。上気してしっとりとシェーンコップの手のひらに
なじむ。胸の薄い色素の小さな突起をそっとじらすように触れればくちづけを
交わしたままアッテンボローの吐息が甘く漏れる。
「は・・・・・。女じゃない・・・・・・ぞ。んっ。」
身をよじって逃げようとするけれどシェーンコップの長い腕はアッテンボローを
とらえて離さない。
「女じゃなくても感じるし、声も出す。」
もっと声を聴かせてくれ・・・・・・。
するりとバスローブを肩まで脱がせて唇でアッテンボローの肌に印を付けていく。
舌で突起を転がす。
「や、や・・・・・・ん、ん・・・・・・んっ。」
感じるかと意地悪く尋ねると朱に染まったまなじりを強気にこちらに向けた。
負けず嫌いな男だなといえば「・・・・・・お前もな・・・・・・あ・・・・・・。」
肌のあちらこちらにみだらに朱のうっすらとした印。脚を閉じようとしたらすぐに
手を入れられた。
「かたくなって熱を持ってるぞ・・・・・・・。ダスティ。」
上を向いているアッテンボロー自身をシェーンコップはいとしげにふれ、手に包む。
「・・・・・・。お前も脱げよ・・・・・・。」
触れたいから。
ぎこちなくあえぎながらアッテンボローはシェーンコップのシャツのボタンを
はずそうとする。けれどままならないから素早くシェーンコップが自分で着ている
ものは脱いでしまう。
少しだけ冷たい肌。
けれどその肌がアッテンボローは好きだった。
シェーンコップのアイボリー色した肌を夢中で愛撫する。
きれいな首に白い腕を絡ませて。
その間もずっと大きな手で中心を上下にしごかれる。
明るい部屋の中で愛し合っているからアッテンボローのものから透明な体液が
出てきているのがはっきり見える。
「だめ・・・・・・ワルター・・・・・・い、いく・・・・・・。」
いってもいいんだぞと抱き寄せられ耳元でささやかれたときシェーンコップの
指と声でアッテンボローはいってしまった。
熱と汗を帯びさらにシェーンコップに吸い付く肌になる。
ふるえるアッテンボローの髪にキスを繰り返してシェーンコップの指は下へ
向かう。
何度も抱き合っているのに。
なぜかいつも初めての時のようにシェーンコップの心をかき乱す。
アッテンボローの手をつかみシェーンコップは自分のものを握らせた。
「・・・・・・熱い。」
翡翠色の眸が潤んで扇情的。シェーンコップをまだこの期に及んでも
あおっている・・・・・・。
熱くて、かたい・・・・・・。
アッテンボローはうわごとのように呟きシェーンコップの唇に唇を重ねた。
「ん・・・・・ふ、んっ・・・・・・。」
指でアッテンボローに指を入れて中の熱さと閉め出そうとする感覚をシェーンコップは
愉しんだ。指を入れるたびにくちゅくちゅと淫猥な音が響き絶え絶えの声でアッテンボローが
嬌声をあげる。呼吸があがっているのが細い肩が上下するのをみればわかる。
きょうは。
「・・・・・・。今日は少しの余裕も残してやれそうもない。」
朦朧としつつも涼やかな光をたたえる翡翠色の眸を見つめてシェーンコップは指の代わりに
自分の体をその熱いところにゆっくり沈める。
余裕なんて、いつあっただろうかとアッテンボローは体の重みを感じつつシェーンコップの背中に
手を回した。一度シェーンコップはアッテンボローをついた。
「やぁっ・・・・・・ん。」
やっぱりここかとアッテンボローの反応を目で愉しみあえぎ声を耳で愉しんだ。
アッテンボローの体の中は熱くて快感を感じるようになってきたのかシェーンコップをしっかりと
飲み込んでいる。時々中がぎゅうっとしまり・・・・・・・余裕がないのは俺のほうかもしれないと
シェーンコップは何度も突き上げながら思う。
腰を打ち付ける音が激しくなるとアッテンボローは首にしがみついた。
「やっ、やっ、んっ・・・・・・っあ・・・・・・。うそ・・・・・・。」
何が嘘なのかシェーンコップがあえぎあえぎきくとアッテンボローは首をいやいやとふり唇を
かみしめた。あまり強くかんでいるから突き上げながら接吻けをする・・・・・・。
これが限界とシェーンコップはアッテンボローの唇をむさぼって、いくと言った。
「うそ・・・・・・う、っん、んっ・・・・・ああ・・・・・・ん・・・・・・。」
抱きしめたアッテンボローの背中がのけぞりいつの間にかわいた髪がさらりと
顔を撫でた。
シェーンコップも果てたけれど・・・・・・。
アッテンボローもまたびくんと体を震わせてシェーンコップにしがみついた。
ぎゅっと目を閉じたアッテンボローのまなじりから涙が伝って落ちた・・・・・・。
正直さ。
テイクアウトのヌードルはのびきってしまいあとでピザでもとろうという話しに落ち
着いた。大きめのソファでシェーンコップに抱きしめられて髪を撫でられたまま
アッテンボローは言った。
「・・・・・・。正直さ。今まではずっと・・・・・・。痛かったんだよな。」
憮然として唇をとがらせて4歳年下の「恋人」が呟いた。
そういえば風呂上がりでのどは渇いていないのだろうかとシェーンコップが聞くと
ローテーブルにあった飲みかけの水割りをアッテンボローは口にした。
悩ましい「27歳の子供」だなとシェーンコップは口角だけをあげて笑みをこぼした。
「・・・・・・。ふつうは痛いんだろうな。これでも細心の心配りをしているんだが。」
やっぱり痛かったかとウィスキーを口に含んで口うつしで飲ませた。
もっと感じさせなくちゃいけないなと笑った。
馬鹿野郎とアッテンボローは小憎らしい美しい顔の頬をつねった。
「でもいやじゃなかった・・・・・・。だんだん痛さはましになってきて・・・・・・。でもまさか
つっこまれていっちゃうとは思わなかった・・・・・・・。」
耳たぶまで真っ赤にして視線をシェーンコップと合わさないようにアッテンボローは言う。
「・・・・・・。つまり悔しいのか。」
伸びた前髪を指で掬って白い額に唇を当てた。
まだ視線を合わせないでふてくされたように違うとアッテンボローは呟く。「違うと思う。
お前のこと好きだし・・・・・・。でも女みたいで・・・・・・・恥ずかしい。」
それなら大丈夫。
「俺はお前と女の区別はついている。お前が好きなんだ。ダスティ。」
そんなに恥ずかしがらなくても。
優しく髪を撫でる。
この不思議な髪の色もこの男のつやのある肌も翡翠の玉を思わせる眸も。
すべてシェーンコップには大事なものに思えてならない。何度触れても全然
足りないと思ってしまう。
なあ。
とアッテンボローの声がしたと思うと首筋に接吻けをしてきた。
「今夜、髪切ってくれ。お前ならできそうだ。」
・・・・・・。
「できなくもないが・・・・・・色気のない作業だな。」
などとシェーンコップが呟くと。
「・・・・・・お前がほしい。少しの余裕も残してやらない。」と耳元でアッテンボローが
ねだった。
・・・・・・。
今日は自分の誕生日だったのか祝い事でもあったのかとシェーンコップは
考えた。移り気な4歳年下の恋人の機嫌が変わらぬうちにまたしなる体に
覆い被さった。
本当は余裕なんてはじめから無かったとシェーンコップは思っている・・・・・・。
fin

クリスティーヌ秋子さまへ。「アッテンの世話をやくおやじ」Rありということで・・・。
Rしかないっ?という作品になってしまいました。親父、世話してない
ですね^^;;;すみません。Rが強調されました。いただいてくださると嬉しい
です。これが「やまなし おちなし いみなし」ってやつですねっ。本当どこが
ヤマでしょう?この作品はクリスティーヌ秋子さまのご自由にしてください。ねっ。
りょう
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