あなたの代わりはどこにも居ない・5







いや。

「馬鹿なことを言ったな。でも酒に酔ったわけでもないし冗談で言ったの

でもない。・・・・・・恋ってそう簡単におれはまだまだお前さんのように抑え

きれないみたいだし。未熟だよなあ。我ながら。」

ほんと、野暮だよと笑ってもうお開きにしようと言った。



それから。

「さっき言ったことは忘れてくれていい。ただの片思いだし。自分でも不思議

だけど好きなのに言わないってのはどうもな。でも仕事に障るといけないし

気にしないでくれ。本当は・・・・・・気軽に酒を飲む仲間になれればよかった

のにな。俺が台無しにしたかも。」

と青年提督は恥じているけれどまっすぐ視線をそらさないでリンツに言った。



・・・・・・。



「帰って寝よ。今夜ははなせてよかった。じゃあ俺帰る。勘定払っておくから。」



全部に異議があります。



リンツは目の前で席を立とうとしたアッテンボローの腕をつかんで・・・・・・。

「えっと・・・・・・。会計は払いますから。どう考えても自分がずいぶん食らい

ましたし酒も飲んでますから。」

と有無を言わさずそのままアッテンボローの腕を引っ張って勘定を済ませた。

ひどいなあとアッテンボローは言う。

「俺これでも将官だぞ。給料がお前さんたちと言っちゃなんだが違うんだから。

これじゃ甲斐性がないみたいだろう。払わせろよ。」

店を出て文句を言う青年提督にリンツは言う。



「じゃあ会計に関してはあとで。」

あのですね。

「アッテンボロー提督の言うことに異議があるんです。」

リンツはまだアッテンボローの腕をつかんでいる自分に気がついて手を離した。



そんな。

「そんな直球投げられたら自分の負けです。」

イゼルローン要塞にも夜の空があり偽物の星が輝いている。

リンツの目の前にいる青年提督は宇宙の星よりまばゆく思えて。

リンツは降参した。



「本当はあなたのことが好きなんです。・・・・・・出会ったときに恋してました。」

でも、自分はセクシャルマイノリティーに位置するから怖くていえません

でしたと偽物の空の下、リンツはアッテンボローに言った。

怖かったんです。

「どんどん惹かれて、あなたに振り返ってもらうこともない恋を抱き続ける

ことが・・・・・・。自分は臆病です。・・・・・・・提督の勇気の1%も持ち合わ

さないような男です・・・・・・。それでもまだ・・・・・・。」



好きでいてくれますかと今度は薔薇の騎士連隊第14代目連隊長がつね

みない緊迫した面持ちでアッテンボローに告白した。



・・・・・・。

だから言ってるだろ。

「そう簡単に気持ちは抑えられないって。仕方ないだろ。おれだってなぜ

お前のような男を好きになったのか理由はいくらでもつけられるけれど

どれもそれが真実とも嘘とも言えなくて・・・・・・ただ・・・・・・。」

アッテンボローはふてくされたように言う。

「お前の眼中にないっていう存在には堪えられないし・・・・・・えっとな・・・・・・・

つまりな・・・・・・。」



こういうことの続きは。

「どっちかの部屋で話さないか。公共の場でできる話じゃない。」

・・・・・・。

「先にこの話をしたのは提督じゃありませんでしたっけ。」リンツは別に

悪気があっていったのではない。事実を述べただけである。

アッテンボローはむ、とリンツの顔をにらんだが。「そうだよな。こっちから

言い出したんだった。」

と素直に認める。



その素直さが・・・・・・。

「提督、うちに連れて帰っていいですか。・・・・・・すごく・・・・・・あなたが

かわいいひとに思えて・・・・・。」リンツがそういうとアッテンボローはまた

軽くにらんだ。

「かわいい言うな。おれ、男なんだぞ。」

「じゃあ、すごく愛しいんであなたを連れて帰ります。・・・・・・いいですか。」



・・・・・・うん。

いちいちきくな。恥ずかしいとアッテンボローは14代目の脚を蹴った。



行儀悪い人だと思うけれど。

かわいいというなと言うけれど。

あまりに愛らしくて・・・・・・今触れてしまうと抱きしめて離せない自分を

リンツは確信した。

「いくら足蹴にされても。」



一度抱きしめたらもう離しませんからねとリンツはアッテンボローの翡翠の

眸をのぞき込んで言う。



佐官の部屋は実は要塞にきてはじめてはいる。

アッテンボロー自身は未だに少将と呼ばれるのが不思議だったし少し

居心地が悪い。大佐と呼ばれる身分で十分だったのになあという奇妙な

思いにふけってリンツの部屋に入った。



これは緊張しているからそれを紛らわせるために思考を切り替えている

のだとアッテンボロー自身わかる。

当然だ。



好きだと思った相手の部屋にはいる。

好きになったのは男。

アッテンボローが緊張しないはずがない。



提督と呼ばれてアッテンボローは思わず身構えてしまった。・・・・・・でも

振り返ってみるとリンツは苦笑していた。

「珈琲がいいか酒の方がいいか聞こうとしたんです。どちらがよろしい

ですか。」

いきなりおそわれると思われているらしいとリンツは思い頭をかいた。

提督のこと。

「提督のことすごく好きです。でもいきなり話を進めないです。それとも

まどろっこしいですか。こういうスタンスは・・・・・・。」

・・・・・・。



いや。

「いや。・・・・・・。珈琲もらおうかな。別に酔ってないけど酒のせいにしたく

ないから。そういう流れみたいなのりだと後々言われたくないしな。」

そんなこと言いませんよと柔らかな笑みを見せた。

そか、ならいいやとアッテンボローはそういうとなんだかすっきりした模様で

ソファに遠慮なく座った。リンツは湯を沸かし珈琲を入れ始めた。

かぐわしい香りが漂ってきてはいと大きめのマグカップを手渡された。



「ありがとう。うまそうだ。」

といったその隣にリンツは腰を下ろした。「うまいかどうかはわかりません。

先代に言わせるとあと2歩深みがないといわれるんですよね。」と実に

自然にすぐ近くにいる。

・・・・・・アッテンボローは思った。



そっか。恋人同士の距離ってこういうものだっけ。

・・・・・・と乏しい経験を思い出した。

アッテンボローだって部屋で恋人と過ごした経験くらいはある。数少ないが。

隣にさり気なく座るということが彼はあまり得意ではなかった。

リンツはごくふつうに隣で珈琲を飲んでいる。・・・・・・。慣れているのだろうかと

少し青年提督はいじわるを言ってみたくなった。



「・・・・・・。シェーンコップはまさかお前さんの恋人だったって落ちはないよな。」

リンツは隣の青年提督の顔をまじまじと見つめて。



「・・・・・・。あのひと、恋人にしたいですか。上官としては頼りになるかた

ですが恋に関して言えば・・・・・あまりに減点がおおいひとですよ。次の恋ばかり

追いかけておいでです。」

いくら「男殺し」といわれても自分は相手を選んで交際してますと14代目は

少し不機嫌そうにカップに唇をつけた。



怒ったのかよとアッテンボローはリンツをまた脚で小突いた。真横でみる

リンツの横顔は鼻の形がきれいでほお骨が秀でていた。

伏せられたまつげは長い。

いいえと少し固い声でリンツが返事をした。

「怒ってませんから。」

「嘘付け。冗談だよ。・・・・・・何となく・・・・・・お前がこういうことに慣れている

気がして・・・・・・。そういうの悔しいじゃん。・・・・・・。」



無様だよなおれとアッテンボローは思っていると飲みかけのカップを

取り上げられた。



提督。

「信じる信じないは提督にお任せしますけど、こんな恋、たぶん誰とも

比べられないです・・・・・・。あなたの代わりはどこにも居ません・・・・・・。」

まっすぐであたたかくて、少し照れるような言葉の次に骨張った指が

アッテンボローの髪に触れ、撫でた。



きっとふつうならアッテンボローはこんなことをされればけんか上等になる

のだけれど。まぶたを閉じたら優しい唇が降りてきてそのまま抱きしめられた

・・・・・・。



リンツの髪から少しシャンプーの香りがして唇からはほろ苦い珈琲の味がした。

中間照明の部屋でもわかるプラチナブロンドにそっと触れてみる。

・・・・・・やっぱり自分はこいつが好きなんだとアッテンボローは彼に抱かれることに

なんの躊躇はなかった。







でも。

「・・・・・・。おれシャワー浴びたい。」

だめですとリンツは天下のアッテンボローの発言を「却下」した。「お前からは

いいにおいがするけど、おれは昨日の夜浴びただけで・・・・・・。」

それにここはベッドじゃないしといろいろというと唇をふさがれた。



提督からも。

「提督からもいいにおいがします。気にしないでください。」そりゃお前は気に

しないだろうけど・・・・・・。「おれ、初めてだし・・・・・・ソファじゃない方がいい。」

と呟いて・・・・・・。「あ、セックスが初めてじゃないぞっ。」とあわてて訂正した。



それはわかってますよとリンツはじっとアッテンボローの眸を見つめた。

「・・・・・・そうですよね。最初がソファじゃちょっとサバイバルですよね。」と

アッテンボローをいとも簡単に抱き上げた。「確かに最初が肝心ですね。何事も。」

本当は。

「本当はもっとゆっくりお互いのことを話したりいろいろとあなたのことを

知りたいって思っていましたけれど・・・・・・俺も所詮男です。」



提督を離したくないんですとゆっくりとリンツはアッテンボローに接吻けを

した。



ベッドにおろされてアッテンボローは覆い被さるリンツに言った。

「あ、あのな。・・・・・・言いたいことがあるんだけど・・・・・・。」優しいキスの

合間にアッテンボローはとぎれとぎれ声にした。



「・・・・・・どうかしました。怖いですか。」

そうじゃなくてな。

「俺、別にこの関係がオープンになってもいやじゃないから。・・・・・・

むしろお前の上官やポプランがごちゃごちゃ言ったらお前、ちゃんと・・・・・・。」



俺を独り占めしろよ。



まじめな顔で頬を上気させて腕の中でいとおしい青年提督が言う。

「もちろんです。」・・・・・・愛してます、提督。

コンマ1ミリの隙間もなく。

熱い肌が重なり合って。

余裕なんてアッテンボローにはあるはずがない。

それでも絡めた指の確かさに、体の重みの心地よさに心はあたたかくなる。

幸せを感じるのは・・・・・・リンツがけして焦らずアッテンボローを大事に

抱いたから。

指と舌と唇、視線で丹念にゆっくり愛情を込めてアッテンボローの苦痛に

ならぬようにリンツは心を砕いた。



流れる緑青と銀の光と色が交差する髪に接吻けて。汗ばむ額を撫でて。



もし・・・・・・。

「・・・・・・もしこれが夢だとしたら・・・・・・。」

リンツはアッテンボローの首筋や白い胸に唇をはわせて呟く。



永遠にさめなくていいです。



ぎゅっとリンツは頬をつねられた。「現実だ。夢じゃないだろ・・・・・・。」

俺は、ここにいるだろ・・・・・・。

まだわからなかったら脚でも蹴ってやろうかと物騒なことを小憎らしい

ほど愛らしい笑顔でアッテンボローは言う。「・・・・・・いいえ。十分です。」



腕の中の恋しいひとはどんなときでもまっすぐで。

しんしんと降り積もる雪のようにいくら跡をつけても純真なまま・・・・・・。

けれど触れるたびに漏れるあえぎ声や吐息にますます「男」を刺激される。



「・・・・・・・もっと声、聞かせてください・・・・・・。」

やだとアッテンボローは愛撫を繰り返すリンツに言うけれど。

「だって・・・・・・・こ、声だしちゃったら・・・・・・んっ・・・・・・・やぁ・・・・・・。」

オンナノコミタイダロ。



俺は女は抱かないですし、愛さないですよとリンツはアッテンボローの

耳元でささやいた。



「耳元・・・・・・・ずるい・・・・・・・やん、・・・・・・・っ。」



全身がリンツに触れられることによって感じる部分になってしまう。

ほんのりと朱に染まった目元に愛しくてキス。

あなたの声が聞きたいんです・・・・・・。

指をアッテンボローのたいらな胸をじらすように優しくはわせた。



「ぁ・・・・・やだもぉ・・・・・・っ!!っ・・・・・・。」

数十回目の舌が絡まる接吻けをかわして唇がはなれるとつーと互いの

唾液が白い細い糸を引いた。

まだ足りなくてアッテンボローはリンツの首に腕を回して唇をねだる。



「愛してます・・・・・。提督・・・・・・。あなたしか見えない・・・・・。」

はあはあと呼吸を荒くしてアッテンボローも愛してると言おうとするけれど

声にならない。脚を抱え上げられてアッテンボローは瞳をぎゅっとつぶった。

その恥じらいの表情がリンツはきれいだと思う。



「きれいですよ。提督・・・・・・。」

うそ・・・・・・「や・・・・・・ぁん、・・・・・・あんまりみるなよ・・・・・・。」

いやですとリンツは十分エレクトしたアッテンボローのものをちろりとなめた。



「やっ・・・・・・。ああんっ・・・・・・。」

透明な体液がしたたってつややかに光る。なまめかしいそれをためらわず

リンツは口の中に含んだ。

はっ、はっ、はっ・・・・・・と体をひくつかせて腰が浮くアッテンボローをさらに

口でいたぶる。なまめかしい汗ばんだ白い肌が吸い付いてくる。指でそっと

自分が入る場所をまさぐってみる。

じゅわっと熱い・・・・・・。



アッテンボローが苦しまないようにたっぷりローションを使って少しずつ

広げる。それでも中は熱くてきつい。

・・・・・・。

「たぶん苦しいと思います。無理に今夜つながらなくてもゆっくりならして

いきましょうか。」ぎゅうっとまぶたを閉じ目の端に涙をためている

アッテンボローをみてリンツは優しく頬にキスをしてささやく。急ぐことはない。

傷つけたくないと思った。



そんなの、やだ。「・・・・・・ちゃんと来いよ。・・・・・・俺。」

お前とつながりたい・・・・・・。



リンツは幸せな気持ちになった。「・・・・・・あなたが本当に好きです・・・・・・。」

ゆっくり少しずつ広げたところに自分をリンツは沈めた。

最初はアッテンボローが感じるところを探しながら。

「ぁあんっ。」

嬌声がひときわ甲高くなりたぶんここかと締め付けられた自分でアッテンボローを

突き上げた。

やぁんっ、ぁん、やっ。

もとから少しハスキーだったアッテンボローの声がますますリンツの胸を

熱くする。幾度か突き上げのけぞる白い背中を抱きしめ何度も愛していると

リンツは自分もまるで初めての時のようにうわごとのように呟く・・・・・・余裕の

かけらもなかった。



熱くて締め付けのきついアッテンボローの中でリンツはその指を

しっかりと絡ませたまま果てた・・・・・・。



リンツの腕に頭を乗せてアッテンボローは少し意識を飛ばしたらしい。

「提督、寝顔かわいいですね。また理性がなくなりかけました。」

・・・・・・。

初陣で勘弁してくれと呟くとそっと唇が重ねられた。

気分はどうですかと尋ねるとアッテンボローはうーんと考えて・・・・・・。

「よくわかんないけどお前が好き。たぶんじゃなくてほんとにすき。」



剛速球の直球だとリンツは思う。「・・・・・・自分もいっそうあなたが

いとおしくなりました・・・・・・。」色のない世界に身を置いてきた自分の中に

鮮やかで・・・・・・けれど時にけぶるような色彩をまとうアッテンボロー

という「恋人」が入ってきた・・・・・・。

いつどこで命が果てようがかまわぬ生き方をしてきたけれど・・・・・・。



最後の恋。

リンツはそう感じたしそれでいいと願った・・・・・・。



アッテンボローは心の中で思った。

・・・・・・お前の代わりだってこの宇宙のどこにもいやしないんだ、と。

でもしばらくは言ってやらないとリンツの肩に頭をこすりつけて甘えた。

それは。

おねだりですねと柔らかで優しい声がささやかれ・・・・・・。

うんと青年提督は14代目の唇に唇を重ねた。







この後日三日ほど空戦隊第一飛行隊長はとにかく低気圧でご機嫌斜め

だったし要塞防御指揮官は意味ありな笑みをリンツに向けたものである。

ブルームハルト少尉は「やっぱりお似合いの二人だと思ってました。」と

自分のことのように無邪気に喜びヤンは「恋人としてシェーンコップやポプラン

よりずっといい。」などと胸をなで下ろした。



外野はうるさいけれど。

とうの二人はなんとか「恋人」の第一歩をふみだしたというところである。



fin



 



あんまりエロくないですね。

これはシリーズものにしてエロい物も書こうと思う悪巧みです。

通報しないでくださいね。この二人ってなだらかにずっと二人で生きていけそうですね。

というか14代目はさすがにローションを持っていたと。メモですよ。メモ。