無かったことにしたくない・後編






最近。



「お前は動きが悪い。」ときっぱりと上官である要塞防御指揮官殿にいわれ

カスパー・リンツ中佐は姿勢を正した。

連隊長の指揮が鈍れば1000人あまりいる精鋭の薔薇の騎士連隊が烏合の

衆に成り下がる。「お前さんに連隊長を譲ったのは小粒ながらおれの跡目を十分

継げると判断したからだ。しっかりしろ。」と自信満々にシェーンコップは言う。



小粒。

確かにこの人に比べると自分はかなりの小物だろうなと思わざるを得ない青年

である。それでも1000人余の連隊を束ねる人間が「はい。無能です」ともいえない。

「改めます。閣下。」

小粒なりに精進するしかない世界。

1000人余りの部下を抱えた自分でもときに言いようのない重圧を感じる。ならば

分艦隊という大所帯を預かったあのひとは。

心にどれほどのものを抱えているのであろうか。

恋に落ちてしまったときがついたときにはもう青年提督の不思議な髪の色を目で

追っていた。鉄灰色と一般に言われるそうだがリンツがたとえるなら翡翠の石に

薄く銀の幕でコーティングしたような色の髪と眸の色、となる。

身長はそれなりにあるのに男にしては線が細い。それだけで惹かれたとは

思えない。

まっすぐなまなざしと春の陽光を思わせるきれいな笑顔に心を打たれた。

27歳の若さで提督となったエリート。

閣下と呼ばれいつも分艦隊主席参謀長に追い立てられ仕事をしている姿は

まだまだ稚い(いとけない)少年のよう。

えらぶったところは微塵もなくてかといって睥睨(へいげい)もしない。その

すがすがしさにどんどん心が傾いた。

女性と過去に恋をした。

現在彼が恋しているのはまごうことなき男。

けれど表情の豊かな眸も冗談をとばす小粋さも、真摯なまなざしも。

すべてリンツの心を捉えて離さない。

ダスティ・アッテンボロー少将。

・・・・・・気がつけばいつも彼のことを思ってしまう自分がまだまだ青いと

思う。



訓練が終わったあとシャワーで一日の汗を流した。ブルームハルトに飲みに

行きませんかと誘われたけれどどうもそういう気持ちにならなかった。

また今度なと街に繰り出す部下たちを見つめ、自分の官舎へ戻ることにした。

途中口笛を吹きながらこれからデートですと言わんばかりにご機嫌な空戦隊の

オリビエ・ポプラン少佐に出会った。

えらくしけたつらをしてるんですねえと出会い頭に憎憎しい一言を言うので

「生まれつきなんだ。お愛想は母親の腹においてきた。」

などと返してしまった。

・・・・・・どうでもいいがこの男はやたらにアッテンボローと一緒にいるなと思う。

恋慕でないにせよ階級差や年の差を越えて冗談を言い合う様子はリンツとしては

見ていて気持ちのよいものではなかったし現在でもそれは進行形である。

せっかく容姿端麗に生まれついているのに愛想のひとつも無いとはご愁傷様ですと

ポプランは言う。

「貴官はいいな。いつも気楽で。悩みや思慮をお前さんは持ち合わせて生まれて

こなかったんだろう。」

悩みがないとは失敬ですねと口を尖らせポプランは言った。

「ねえ。リンツ中佐。夜のお相手に経験豊富な美人とまったくのfirsttimeの美人。

どちらをあなたなら選びます?」



ふざけた質問。



「お前さんとはそもそも恋愛観からして違う。愛情がない情事など興味がない。」

仏頂面でポプランに言った。

アッテンボロー提督もリンツ中佐もずいぶんと恋愛に関してはお堅いなと撃墜王殿は

遠慮なく口にした。ほかの悪事は喜んでするくせにと余計な一言も加えて。

「そうそう。アッテンボロー提督にもついに恋人の影を発見したんですよね。」

でも恋にお堅いリンツ中佐は興味ないですよねとポプランはまた口笛を吹いて

歩き出した。



ちょっと待て。



「興味がない話題じゃない。アッテンボロー提督に恋人の影だと。」

「ええ。しかも・・・・・・相手は。」なぜ今日はこんなにも自分の言葉に引っかかってくる

人間がいるのかわからないポプラン。

相手の女性はもしかすると「処女かもしれません。」と朗らかに発言した。



・・・・・・。

どうも自分たちの関係が露見されてからかわれているわけではないと判じた。

関係がオープンになるのはリンツはかまわないがアッテンボローに迷惑になる

気がして彼はいろいろ配慮しているつもりであった。

勘違いするやつは勝手にさせておこうと思う。食いつきが悪く不満だったのか

ポプランは言う。

「だってやたらと今日昼飯のときにfirsttimeがどうとかこうとか聞いてきましたよ。

あのひと。仕事はできるし会話して愉快なひとだけど恋愛面ではどうも今二つ

シャープさにかけるんですよね。お相手がfirsttimeの女性だとしたらちょっと

痛々しいなと思うわけです。」

ずいぶん込み入った話をするんだなと感心したふりでリンツはたずねた。

中佐もそうでしょと撃墜王殿は言う。

「相手がfirsttimeだとすればベッドインしてすぐに楽園とはいかないでしょう。

いろいろと下の準備がいるわけです。じゃないと相手の女性がかわいそうじゃ

ないですか。やっぱり気持ちよくお互い愉しみたいものですから丹念に時間を

かけて慣らしておかないと。」もお。中佐だってわかるでしょうにとポプランは

頭をかいた。

・・・・・・わかりすぎて腹が立つ。

あほらしいから帰るとリンツは事態が飲み込めないポプランを置いて自分の

部屋のほうに足を進めた。カードキーでドアを開けると・・・・・・。



「・・・・・・提督。お見えだったんですか。」

部屋の鍵は合鍵を渡しているのでアッテンボローがいつ部屋にいても

かまわない。

恋焦がれた思いびとだから。

今も大事なひとだから。

アッテンボローはリビングのソファに座って指を組んで視線をこの部屋の住人に

向けぬままいった。



「合鍵、返しにきた。」







まったくの無表情でアッテンボローが言う。その言葉をリンツはただ、聞いた。



見事なポーカーフェイス。さすが20代で閣下と呼ばれる人間は違うとやや

場違いな感想をリンツは持った。

ポストに入れておけばよかったんだろうけどはっきりさせておいたほうが

お互いにいいと思ったからとローテーブルにカードキーのスペアを静かに

おいた。

「お前は優しいやつだった。卑怯でもなかったしいいやつだった。

でも終わり。」立ち上がりアッテンボローはかすかに微笑んだ。

じゃあなと。

勝手に。

「勝手に自己完結しないでください。それといいやつだったとか人を死人の

ように言わないでください。墓碑名を読み上げているみたいですよ。」

やっぱり男にしては華奢な細い腕。自分の片手でつかめてしまう細い腕。

まっすぐな翡翠の眸がリンツを見据えた。



「自己完結じゃない。おれは生身の男でこれは変えようのない事実。

お前を恋慕して関係を持ったけれどあれきり御用なしとなれば自己完結

とはおよそいえないと思うぞ。好きだからそばにいたいと思うし肌を合わせ

たいと思うのは恋をした男なら仕方ない。けれどそれをやさしく拒絶した

のはお前さんだ。」

・・・・・・男と肉体関係を持つなんて面倒だよなとアッテンボローは腕を

掴まれたまま言う。

「拒絶していたわけじゃないです。・・・・・・言い訳がましいですが。」

そうはいってもリンツは腕を離す気配はない。

「女性の体が始めて男を受け入れるとき痛いと聞くが確かに同感する。

痛みには軍人だから慣れはしている。でも正直言えば痛かったし苦しかった。

だけど。」



お前、俺が幸せだったことなどわかってなかったろ。

「苦しかったけれど俺はお前とひとつになれたのかって感動すらした。

どういういきさつで俺を好きだと思ってくれたのかそれだけはうれしいし

ありがたく思う。でもな。俺だって恋すれば抱かれたくもなる。ちょっと

いっていることが女々しいが要するにお前がほしくなる。」

でも。

「お前はあれからキス以上二人きりになってもしない。男に突っ込むのは

面倒だよな。血で汚れるし・・・・・・よくなかったんだろうな。」

お願いですから。



「言い訳させてください。それとそんな風にあなたを貶めたりしないで

ください。」

事実を言ってるんだよと青年提督はまったく表情を変ない。

やさしい拒絶とあなたは言いましたねとリンツはできるだけ穏やかに

言おうと決めた。だが言葉にしようとするとうまく言えない自分に

歯噛みする。

「・・・・・・私が悪かったんです。提督。」

あなたのことは宇宙で一番大事なひとだと思っています。「心から。」



とりあえず。「腕、痛いんだけど。話は聞くから腕を離せ。」

あ。

すみませんとリンツは言う。アッテンボローは無表情だったがふっと

ちいさな笑みを漏らした。「お前って謝ってばかりだな。」自由になった

腕を少し動かしてアッテンボローは腕組みをして年少だが上背のある

中佐殿に目線を合わせた。

「・・・・・・さすがに腹が据わってますね。提督。」

「別に。自分が悪いとは思わないから。」

そのとおりですねとリンツは言った。



あなたを抱いたとき・・・・・・「俺も幸せでした。急速に惹かれてしまって

けれど実ることはない恋だと観念していたいました。でもあなたも・・・・・・

自分を好きでいてくれたことが・・・・・・幸せでした。」

ここからは言い訳ですと青年は自分の青臭さや情けなさにため息をついた。

「あなたが苦しい思いをしているのがわかって。知識ではわかっていても事実

痛そうで・・・・・・提督、気を失ったこと覚えておいでですか。」

・・・・・・それは覚えてないとアッテンボローは驚く。失神まで起こしたのか

自分はとあきれた。



「自分は多くの血を浴びて生きてきた人間でいまさら赤い血に動揺するのも

おかしいのですが浴室で・・・・・・失神したあなたを運んで流れた血とあなたに

押し込んだ自分の体液を見てずいぶんひどいことをしたと思ったんです。

もっと自分を抑えることがなぜできなかったんだろうかと・・・・・・。」

一度に性急に求めなくても・・・・・・。



だって。



「そりゃお互い興奮してたからな。」

アッテンボローはこともなくあっさりという。

そういわれれば身も蓋もないんですよとリンツはこたえた。

「自分のせいで・・・・・・いとおしいと思うひとが意識までなくして・・・・・・

血を流しているのを見たらひどく自分が下種な男に思えたんです。」



まじめだな。

天然記念物にでも認定したいほどまじめだとアッテンボローは思う。



「時間をかけて・・・・・・ゆっくりとあなたを愛せるようになるまで自分の

欲望を優先させないようにしてきました。・・・・・・あなたに触れると自分も

人間ですし・・・・・・あなたがほしいと思います。だから・・・・・・提督の肌に

触れないようキスまでと決めていたんです。結果的に情けない話ですよね。

あなたを傷つけたくないというのも本当ですが自分が下種に成り下がりたく

ないという醜さをかえって露呈したわけですから。」



俺は穢いとか醜いとかそういうのは・・・・・・。

「生きていくうえで露呈したり恥をかくのは仕方ないと思ってる。いまさら

きれいに生きるなんぞ無理な話だから。どんな人間だってきれいにもなるし

穢くもなる。清く正しくなんぞどだい無理だもんな。」



アッテンボローのどこに惹かれたのか本当の理由がリンツにはわかった

気がした。

この潔さ。醜さやあざとさなど人間の悪の感情すらもありのままにさらし

こうべをあげて生きるこの生き方にひきつけられたのではないだろうか。

自分が未熟だと思うのは人を殺す仕事を生業にしているくせにまだどこか

自分の姿を偽ろうとする往生際の悪さではないかと感じた。



「・・・・・・・提督。言い訳、終了しました。」

うん。

アッテンボローはうなずいた。「で。どうしたいんだ。シェーンコップのように

女性遍歴を繰り返すか。ブルームハルトのように理想の女性を追い求める

のか。お前さんはどうするつもりなんだ。」

できれば。



「あなたを抱きたいんですけど。」

迷うことなく。

抱きしめたい。



今度同じような情けないことをしたら・・・・・・。

「お前がもし今度また同じように俺たちの関係を怖れたら・・・・・・。」

リンツの長い腕の中に抱きしめられてアッテンボローは・・・・・・。

あはは。



「・・・・・・だめだ。お前を捨てるほどおれ潔くはなれないや。・・・・・・お前の

そのまじめさや青臭さが・・・・・・・俺には嫌いになれそうもない。また説教

するだけ。けんかして・・・・・・お前が謝って仲直りだ。」

やっぱりおれがしかられて謝るんですねとアッテンボローの唇に唇を重ねた。

足元が宙に浮いたと思ったらアッテンボローはリンツに抱きかかえられていた。

「・・・・・・こういうの女みたいな扱いと思わないか。」

そうですか。とリンツはしれっと流した。



こら。急にかわいくなくなったぞと青年提督は14代目に抗議をするが

「俺も男ですしかわいくなくていいんです。」と口をキスで封じ込められた。

青臭くてもいいんですよねとベッドに青年提督を横たえて覆いかぶさる。

考えてみれば。

「提督を苦しめたくないなら何日かかけて「開通」すればいいんですよね。」

初めて無邪気な笑顔をリンツが見せた。

彼も中佐という階級で薔薇の騎士連隊という精鋭中の精鋭の指揮官となった。

さまざまな気負いがあっただろうなとアッテンボローはその笑顔を見て

思った。



失敗したら。

「やり直せばいいしけんかすれば仲直りすればいい。恋人ってそれで

いいんだよな。」

アッテンボローはやっぱり男の服は脱がせにくいと思いつついった。

そうですよね。「でも本気で合鍵、返しに来たんですか。」

リンツは青年提督のスカーフをするりと抜き取り首筋に唇を這わせた。



あ。あれな。



「半分は・・・・・・ん・・・・・・・っ。・・・・・・・はったり・・・・・・。あのさ・・・・・・

リンツ・・・・・・・あの、やっ。首にはあとをつけるな・・・・・・よ。ん・・・・・・。」



・・・・・・はったりでしたか・・・・・。



するりとネクタイを抜き取られするりするりと服を剥ぎ取られるのは

アッテンボロー。リンツのほうはすっかり自分の衣服など脱ぎ去って。

「・・・・・・ずるい。」

真っ赤になって素肌に触れられキスされアッテンボローはついたくましくて

きれいなリンツの体にしがみついた。



「ずるくないですよ。正々堂々と・・・・・・下の準備をしてるんです。」

遠慮しないことにしましたしとアッテンボローに深い接吻けをして。

し、下の準備?「な・・・・・なんだ。それ・・・・・・やだ。やっ・・・・・・。」

一度にいきなり入れようとすれば物理的に無理が生じますもんねと

14代目はアッテンボローのものをはじめはやさしく、だんだん強く

しごく。

「だめだって・・・・・・ん・・・・・・あ。」

俺のこと、愛してますかと14代目は青年提督の耳元でささやいた。

「あ・・・・・たりまえだろ。ほれてなきゃ・・・・・・あん・・・・・・・リンツ・・・・・・。」



ちなみに。

「俺のファーストネイムはカスパーですよ。・・・・・・ダスティ・・・・・・。」

透明な体液がアッテンボロー自身からあふれてくる。

それをためらいなくリンツは唇ですすった。

・・・・・・だめ・・・・・・・だっていってるだろ・・・・・・・や・・・・・・。

「・・・・・・提督のその声だけでかなりやばいです。」

アッテンボローの太腿の間で麦わらを脱色したような金の髪が上下に揺れる。



ん・・・・・・・で、でる・・・・・・。こら・・・・・・・。

「・・・・・・我慢できない・・・・・・・。」

枕をギュウッとつかんでいると腕を首に回させられた。

我慢しなくていいですよとこしゃくな14代目の一言でアッテンボローは

いってしまった。

・・・・・・こら。

「飲むなよ・・・・・・。」

手遅れですとにこりと年少の恋人は微笑んだ。「あれだけご立派に

挑発してくださったんですから。」

覚悟してくださいねとカスパー・リンツは美しい笑みを見せた。



さらにリンツの唇が違うところに当てられるとアッテンボローは「だめだし」

をした。

「そんなとこだめ・・・・・・俺今日シャワーまだ浴びて・・・・・・・あん・・・・・・

ない・・・・・・・。」

お気遣いなくとリンツは言う。



「俺はさっき浴びましたから。」



アッテンボローの白濁した体液とリンツの体液を使って指を一本ずつゆっくり

入れてみる。きっとどこかにアッテンボローが感じる場所があるはずだと

丹念に探してみる。

ああんと一段高い声が室内に響いた。その声は十分リンツを欲情させた。

「・・・・・・ここかもしれないですね・・・・・・。どうします?今夜はここまでに

しましょうか。」

俺だけのかわいい提督。

それはやだと震えながらアッテンボローは言った。

「おれだけ・・・・・・・いっちゃったのいやだ。」

目の端に涙をためてアッテンボローは言う。余りにいとおしくて

唇を重ねた。



二本目の指を入れるとまださすがに痛むらしい。「ここでやめたら怒りますよね。」

リンツは舌の絡まる接吻けを交わしつつささやいた。

うなずくのがやっとなアッテンボロー。じつは。

「・・・・・・俺も止まりそうもありません・・・・・・。愛しています。」

リンツにしがみついて熱を持った体を震わせてアッテンボローは

「・・・・・・俺もだ・・・・・・。」とリンツの唇をむさぼった。



指と指を絡めて。

さっきアッテンボローが感じたと思われる部分にリンツは自分のものをおさめた。

「・・・・・・く。苦しいですか。ダスティ。」

でも。「やめるなよ・・・・・・。」愛してるから。

体液が交じり合う音と腰を打ちつける音が部屋に響きアッテンボローはつめを

思わずリンツの背中に食い込ませた。



あ・・・・・・あ、ん・・・・・・・あ、あ・・・・・。

アッテンボローが余りにきつく締め上げるのでリンツは「いきますよ・・・・・・。」

と汗と涙で濡れたアッテンボローの頬に唇を当てたまま・・・・・・。

一回のセックスで男性はおよそ100メートルを全力疾走したような状態に

なるという。

リンツは呼吸を乱しながらも体重がアッテンボローにかからぬように

彼を抱きしめた。アッテンボローは肩で息をしてぐったりと体をリンツに

ゆだねきっていた。



絡めた指。

「・・・・・・・大丈夫ですか。ダスティ。」

もつれた翡翠色の髪を骨ばった指ですくう。「・・・・・・・うん。何とか・・・・・・。」

年上で気が強い恋人を抱き寄せてしっかりと抱きしめた。

まだ当分は痛いでしょうねと呼吸を整えつつリンツは言った。

かもなあとアッテンボローは腕の中で答えた。



でも。

「今後は遠慮しないんだろ。」

「はい。」

・・・・・・即答でかえってきた。

けれど・・・・・・このやさしい温度と感触。アッテンボローはうれしいなと思う。

「おれのこと。すごく好きだろ。」

「はい。」

即答でかえってきた。これには満足した。

・・・・・・おれもすきだから。



ゆっくり・・・・・・けんかしたりお互い悩んだりしながら手探りで

恋をしよう。愛し合っているのに触れ合うこともできないのは

大事にされるよりもつらい。苦しみや痛みでさえも無かったこと

にはしたくない。

そこまでアッテンボローはリンツに伝えたが後は記憶がない・・・・・・。






二人が恋仲であることは別にアッテンボローは隠していなかったから

そのうちおのずとイゼルローン要塞を駆け抜けた。

シェーンコップはリンツの心のうちなど看破している大物なのでこれで

少しは部下が成長できれば勿怪の幸いだと思うに過ぎない。

オリビエ・ポプランにいたっては恋愛は個人の自由だし口を挟まないことに

越したことはないと他人の恋愛沙汰より今夜のお相手を探すことに日々

明け暮れていた。



アッテンボローとリンツの恋はまだ始まったばかり。

強情で気の強い青年提督と生真面目だけれどすこし大人になった

14代目。



深い信頼と愛情を得られるかは二人の絆しだい・・・・・・。



fin



 



どうだといわんばかりにあえいでみました。

脳から羞恥心を追っ払えー!!週間です。あえがないで書く手段はいくらでも

あるのですが今回は試みによがらせてみました。男同士のイイコトは難しいです。

うわさでは女性よりも気持ちがよいそうなのでどこかスポットがあるんでしょうね。

って、人様に差し上げる作品でさんざんかいてしまいました。

森沢様。赦してください。りょう。