告白前線 停滞中
あのさ。
ダスティ・アッテンボロー少将閣下は士官ルームで酒を飲みつつ年少の
僚友に声をかけた。赤目の金髪ときらめく緑の眸の持ち主オリビエ・ポプラン少佐に
対してである。
「お前はさ。確かとっても女性が好きなんだよな。ユリアンに聞いたがあの坊やの
姉がいないか聞いたことがあるだろう。」
ありますね。
「ユリアンににた姉だったらなかなか美人だと思ったんですよね。」とポプランは
6杯目のダブルを飲み干しちっとも乱れなく言った。
まるでざるだなあとアッテンボローは思う。いくら飲ませてもシェーンコップ准将も
ポプラン少佐も酔わない部類の人物のようだ。
「いいか。ポプラン。少し年上になるが俺にも姉がいる。長姉と次は嫁に行っているが
三番目の姉は未婚だし・・・・・・恋人はいたかな。あまり覚えてないが俺と似た姉だ。
俺の一つ上。どうだ。」
7杯目のグラスに唇をつけてポプラン少佐はしばし黙って年長のそばかすが特徴の
青年提督をじっと見つめた。
「ほう。それはきっとおきれいでしょうね。でも恋人がいるんでしょう。提督、姉上を
紹介してもらってもおれはあなたの姉上にふさわしい男ではないですよ。」
女性に対しては博愛主義者ですし。
「それって恋人としては減点対象でしょう。」
しれっというポプランにアッテンボローは4杯目のウィスキーを飲みつつ・・・・・・。
「じゃあ貴官は恋人には向かない男なんだな。」
でもね。
「あなたのことはすごく好きなんですよ。」
まっすぐにきれいな緑のきらめきがアッテンボローの眸にも映る。
・・・・・・。
イゼルローン要塞の士官ルームは帝国の調度がしつらえてあり中間照明を
もちいているので落ち着いて酒が飲める。
アッテンボローはヤンのように被保護者も持たないし、恋人もいない。
いままで飲み友達にしていたワルター・フォン・シェーンコップ准将と
オリビエ・ポプラン少佐が豹変して・・・・・・。
現在アッテンボローを口説いている。
ちなみにアッテンボローは青年であり、成人男性である。
二人の恋の達人は確か女性との恋の達人であったはずで。
「おれって女っぽいのかな。」
と隣で飲んでいるポプランに聞いてみた。
いいえ。特にそうでもないと思いますよと少佐は言った。
「なんて言うのかな。性別を超えたときめきを感じるってことです。」
ポプランは自分でも男に恋をしたのは初めてだという。
だからね。
「あなたと寝ることになったらどうやってセックスしようかいろいろと考えたんですよね。」
そんなにうれしそうに言うなとアッテンボローはめまいを覚えた。
安心してください。痛くしませんからとハートの撃墜王殿はキュートな笑顔でほほえんだ。
自分はいわゆる掘られる役なのかと暗澹とした気持ちになる青年提督であった。
声を潜めて青年は言う。
「俺は男と恋をしない主義だ。男と寝る気持ちもない。」
俺もそうだったんですが「あなた魅力的だからなあ。恋しました。小生と交際しましょう。」
シェーンコップの親父に食われる前に。
・・・・・・どっちもいやだ。
青年提督は考えて。「おれ誰か女性と交際しようかな。この年になっても女の影がないおれが
お前さんたちは愉しくてからかってるだろ。」
この要塞に来る前に交際した女性はいる。けれど会戦もあり第十艦隊に配属されるときに
自分は最前線に身を置く人間だから女性を幸せにはできないなと感じた。
アムリッツァで死ぬとも思わなかったけれどいずれ死ぬかもしれない。
かといって浮ついた気持ちで女性と恋はできなかった。けれど真剣になれば。
相手を未亡人にしてしまうのかなと思うと。
恋も結婚も棚上げしてきた。
「俺が女の人と交際すればお前らも手出しできないよな。」
にこっと青年提督はほほえんだ。
そういうのはだめですよ。
「お言葉ですが提督。それは女を愛する理由にはなりません。そばにいたい、抱きしめたいと
思わない女を恋人にするのは不毛ですよ。まして口説かれて困っているから恋人を作るっ
てのは邪道ですね。」
えらそうにいうなとアッテンボローはポプランに悪態をついた。
すくなくとも。
「小生は提督のそばにいたいですし、抱きしめたいと思いますよ。嘘偽りなく。それは十分
恋愛です。恋愛に逃げてはだめですよ。」
この件に関してはポプランの言うことは・・・・・・・正論に聞こえる。
でもな。
「本当おれ、お前たちのことは仲間としか思ってないんだよな。本気で答えると。」
ようやく青年提督は頭をかきながら困った様子で言う。
それでいいんですってばとポプランは言う。
「一度や二度告白して落ちるなんてあなたらしくないですから。」
存分に小生を振り回していいんですよと撃墜王は琥珀色の液体を一口口に含んだ。
でも。
「准将だけは気をつけてくださいね。手込めにされそうになったら股間を蹴るんですよ。
いくらあいつが不死身でもおまたは不死身ではいられませんから。」
変な忠告だなとアッテンボローは思う。
「お前は手込めにしないのか。」
アッテンボローが質問するともちろんですよとポプランは言った。
「乱暴な恋は小官の性に合いません。強姦ではなく和姦がいいですね。」
・・・・・・いちいち言葉が卑猥だなと思うアッテンボローは自分が幼いのであろうかと
ふと考えてみた。
「恋人と何事も同意のうえでラブ・アフェアを愉しみたいですからね。言っておきますけど
あなたが女性と交際歴が浅いからあなたを好きになったわけではありませんから。」
あなたって。
「自分で気がついておいでじゃないけどすごく輝いてるんですよ。何なんでしょうね。
育ちの良さかな。品があるとは言わないけど。あなたの笑顔、最高です。」
独り占めしたくなる気持ちはわかってくださいねとゆっくりポプランはウィスキーを
あけた。
今夜はお開きにしましょうと撃墜王が言った。0100時をすぎている。
部屋まで送りますからねとポプランはうきうきしていった。
女じゃないからいいし部屋にきても中に入れないからとアッテンボローは言うが。
准将にねらわれないためですよと撃墜王はいってのけた。
あなたって。
「そこそこけんかできそうですけど本当の肉体労働者の膂力を知らないですからね。
あいつらは人殺しが仕事ですからけんかのプロです。あなたが襲われたら大変です。」
全く訳がわからないとアッテンボローは頭を振った。
お前って腕に自信があるのかと青年提督は勝ち気な目で年少の少佐をねめつけた。
「小生も人殺しのプロです。あなたを守るくらいはできますからね。」
・・・・・・。
そんなことを言われてもとても恋をする気持ちにはなれそうもないとアッテンボローは思う。
いったい世の中どうなっているんだと27歳の青年は途方に暮れる真夜中。
fin
なかなかできてないPAっていうのもいい感じ?ああ。誰かネタをください!!
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