空間の温もり







どうも眠れないといって真夜中に、彼の閣下が部屋に来た。

「遅くにごめん。寝てたよね。」

とヤンがいいコーネフは不機嫌ではなく正直に「寝てました。・・・・・どうぞ。立ち話もなんでしょ。」と

招き入れた。夜中の訪問は驚くことでもない。



彼と付き合うようになってこれは割りとあることだからコーネフも慣れている。それに肉体労働者であり、

彼は実質空戦部隊一番の撃墜王と呼ばれるエリート・トップガンでもある。夜起きていてもさっき二時間

寝たから、突然閣下がきても別にかまわない。ヤン・ウェンリーは睡眠バランスをコントロールできない人だと

コーネフは見ている。



ヤンはいつも腰掛けるベッドに座る。



「なんか飲みますか。カフェインじゃないほうがいいでしょ。うちはいい酒はないからな。ウィスキー

ですけど。」

「ごめん。」

「大丈夫です。ばっちり二時間寝ました。これで十分ですから。」

とグラスを渡して「何か食べますか。閣下。」という。コーネフは小腹がすいた気もするしけど何か胃に

負担をかける食べ物はいやだなと思う。



でもそれより。



ヤンの隣に腰をかけて四歳年長の恋人の頭を撫でた。「またいろいろと考えて眠れなくなりましたね。

あなたの仕事と性格ですから、別に謝らないでいいんですよ。明日昼寝でもなさればいいです。

副官殿もその点に関しての理解があるでしょ。」



と額にキスをした。



「・・・・・・まけたら困るなと思ってね。ローエングラム侯の率いる提督連中の人材の多さを考えるとね。

考えてもせんなしだから、寝たほうがいいのだろうけれど。」

「そうですねえ。うちは国力自体が弱体化しましたからね。・・・・・・あなたは考えるのが仕事だからオンとオフ

がない。・・・・・・おれのとこは別にいつでも来ていいですよ。夜中は人目もないし。・・・・・・ま、もうばれて

公然の関係にも近いですけどね。ともかくいいですよ。うちは。」

うんとヤンは頷いてグラスの液体を口に含んだ。



「眠れないときお前はどうするんだ。」

「・・・・・・すいません。寝入るのが早いんです。睡眠障害はなったことがなくて。」

「そだね。君は体を動かすから眠るのは早いよね・・・・・・。」

ヤンはごろんとベッドの上に転がった。

「・・・・・・酒の量が増えているとユリアンに叱られているんだが。睡眠導入剤をもらったほうがいいかな。」

ヤンを背中から抱いてコーネフは上掛けをかけて横になる。

「眠れないときは無理しないほうがいいとも聞きます。クイズでもしましょうか。」

ヤンはくくっと笑った。

余計眠れないじゃないか。

「明日ゆっくり昼寝ができますよ。では問題です。 「セント・アイブスに行く途中出遭った男に妻7人、妻たち袋を

7つ持ち袋の中には猫7匹ずつ、猫の子供も7匹ずつで、セント・アイブスに行ったのは何人と何匹だ。」

はいかんがえて。」



ひとりだね。

正解です。



首筋に軽く唇を当てる。彼の閣下は「それって古典的なクイズじゃないか。誰でもわかるよ。」

ヤンはコーネフのほうに体を向けてそっと唇を重ねた。

「でもきっとポプランにはわからないですよ。あいつは古典を読まないですから。」

では次。

「「真空」を発見した人は誰でしょうか。」「ガリレイの弟子。トリチェリ。」

そういうことには即答ですねとコーネフはベッドの中でジャケットを着てるのは寝苦しいでしょうとヤンの

スカーフを解いてジャケットを脱がせた。

「これはいかがですか。「『夜を込めて 鳥の空寝は はかるとも 世に○○の 関はゆるさじ』」。

○○とは。」

「逢阪。(おうさか)。」





「じゃあ問題です。イワン・コーネフが現在思っている人物は誰でしょうか。」

・・・・・・。



「そういう問題は即答してくださいね。」と淡い金髪を持った青年は微笑んだ。

「・・・・・・答えなくてもわかるような質問はしないでくれよ。」

とヤンは困った顔もし、微笑んだ。

「なんだかここは・・・・・・居心地がいいな。」

「それはおれの腕の中だからでしょう。」

うんと微笑む閣下。



じゃあしりとりでもしますと若き撃墜王殿はいい、閣下はうんといいながらしりとりの最中でうつらうつらと

舟をこぎ始め寝入った。

それを見守って閣下が風邪をひかないように上掛けを肩までかけてやり寝つきの早いコーネフも

眠った。



fin

 



あ、甘いだけですがこの二人プラトニックではないんです。でもね。ヤンは頭脳労働が激しいので

こういういたわりがうれしいかなと。うちの撃墜王二人とも恋人に尽くす側のようですね。