へたくそな笑顔が隠したもの







軍専科学校卒業時の成績が7位とは。





士官学校を首席で卒業した人間より頭がよさそうだな・・・・・・。



自宅のコンピュータでアッテンボローはシェーンコップの履歴、戦歴を見ていた。

士官学校に合格していながらそっちは興味なしか。頭のいい奴は違うよなとアッテンボローは思う。



士官学校というのは来るものは拒まないところだから入るときの関門は甘い。

出るときはすぐ戦場だから、もっと甘い。さっさと追い出して「少尉」待遇で使われる。



軍専科学校となると衛生、通信、航法、陸戦などさまざまなことを学ぶ。

軍では精鋭機関育成所とも呼ばれる。下士官から准尉となっているアイジンは

エリートなんだなと考えた。



「つまりあいつは何でもできるんだな。」



アッテンボローはまだこない愛人を思った。愛人と呼ばれる男は「恋人といえ」というけれど

愛人、情人で結構だと青年提督は思っている。デスクの端末を切った。いくら彼が分艦隊司令官でも

不用意に軍人のデータベースに入ってはいけないなと思いつつ「愛人」の履歴や戦歴が気になった。



自分は・・・・・・。



アッテンボローは今でも自分の軍人としての能力に疑問をいだく。

士官学校時代とくに勉強に励まずともペーパーテストで5位を下ることはなかった。

彼はまったくと言っていいほど寮で勉強をしない。



授業を聞いていればもう十分なのである。

ノートも板書ではなく教官が言う言葉を書き取るのだ。

それでさらに勉強することはない。

帝国語は耳から入ったから万年首位だった。戦略も3位から落ちたことはない。

どうせこれはこどものお遊びだからとたいしていきまず、のらりくらりと学業を潜り抜けた

人間だった。

実技といっても体育程度はこれも特に力はいれずにきた。

さすがに艦載機シュミレーションや射撃は多少訓練をした。



何となく卒業して少尉になり、憲兵隊に配属されそこで中尉になった。

汚職を摘発した。

捜査だの逮捕だのは彼も嫌いではなかった。



ちなみに彼は士官候補生時代以前から「同盟憲章」をそらんじれる子供だった。

政治には興味があったし立憲制度に関してもそうだった。

司法にも興味がないわけでもない。

この間は冗談でキャゼルヌをからかったが、自治区によれば同性婚姻は認められている。

ただの冗談を言っただけのことだ。アッテンボローはジャーナリストにもあこがれたが

検事になるのも悪くないと思う時期があったほど司法が好きだ。



中尉になり、次は大尉。これも政治献金違法摘発であった。

アッテンボローは正義感が強いわけでない。



穢い政治屋が嫌いなのだ。

士官学校を卒業後わずか三ヶ月のうちにいわゆる、サンズイ事件を6件摘発した。

サンズイとは汚職関連の事件を指す。



政治家もこれには困り圧力をかけた。アッテンボローがいると政治ができないと彼をはじいた。

憲兵隊をわずか5ヶ月で「卒業」した。





はじかれた先は士官学校教官。21歳の中尉。



戦略構想の教鞭を一年とったがその「戦略構想」が統合作戦本部で高く評価されて22歳本部

司令部に配属。アッテンボローの「たまたま出した作戦立案」が採用され彼は22歳で大尉となった。



第2艦隊配属に配属され旗艦「パトロクロス」の砲術士官をレグニツァ上空遭遇戦で任され、

その後少佐に。

第六次イゼルローン要塞攻略戦で駆逐艦エルムIII号の艦長になるが・・・・・・中破され撤退。

しかし死亡者0の功績で中佐に。第10艦隊で参謀を務め大佐、准将ととんとんと・・・・・・

給料があがった。アムリッツァが終わってみれば少将になっていた。









「憲兵、教官、砲撃手、参謀、副官、艦長、提督か。お前は自分の評価が低いがそれだけ

こなせば少将にもなるだろう。どれもお前さんのことだ。そつなくこなしたと思える。」



最近は愛人の声を聞くとすこし、心にあたたかいものが湧いてくる気がするアッテンボロー。

もたれがいのある肩だなと全体重をかける。それでもシェーンコップは崩れない。



「うーん。確かにいろいろしたけどおれはサンズイ摘発が一番面白かったな。教官も愉快だった

かな。・・・・・・制服組だよな。いかにも。おれは陸戦とは縁がなかったし・・・・・・。」

ふたりでソファにすわってウィスキーを飲む。



陸戦などしなくていいんだ。お前は。



「お前のここには・・・・・・。」とシェーンコップはアッテンボローの額にキスをする。

おれはそこそこヤン・ウェンリーをゆうにしのぐ政治構想が入っていると思う。



「おれは政治屋向きなのか。」



唇に指を触れ、アイジンの頭を引き寄せる。唇が重なり、互いの舌が絡み合う。

シェーンコップはアッテンボローの手からグラスを取り上げてローテーブルに置いた。

アッテンボローの首筋にキスをして、舌を這わせる。吸い上げて・・・・・・あまりきつくすると

首筋にキスマークがつくから加減する。



感じやすい性質なのかキスだけで十分アッテンボローの中心は高ぶる。服の上からでも

もうわかる。耳元でシェーンコップは愛の言葉をささやき、手はボトムからシャツを引っ張り出して

まさぐる。男の胸を触って欲情する自分を不思議にも思いながら、アッテンボローの肌の熱さや

眸が誘っている様をみれば・・・・・・。



シェーンコップの指が止まらない。

「ん・・・・・・。ふっ・・・・・・。あ。」

あえいでいるアッテンボロー自身を口に含む。

「やだ・・・・・・・。だめだって・・・・・・。」そういいながら彼の白い脚の間を上下する茶色と灰色の

混ざり合う色の髪にふれ、抱え込む。

「ワ、・・・・・・ワルター・・・・・・・もう、はなして・・・・・・。でる・・・・・・。」

それでも彼はやめないで手も使ってくる。我慢しようにもできなくて。

「やう・・・・・・。」

脱がされかけたシャツからのぞく細い肩が激しく上下する。アッテンボローは苦しげに呼吸をしている。

そのままシェーンコップはまた彼の口をふさぐ。脱がしかけていたシャツをはぎ、ボトムをとりさる。

熱いまなざしでシェーンコップを見つめて器用でない指で彼の服を脱がせる。

「・・・・・・余裕がなさそうだな。青二才。」



扇情的な視線をアイジンに投げつけながらアッテンボローは微笑んだ。

「まだまだ。ぜんぜん。」青二才は言う。

へたくそな笑顔だな・・・・・・着衣をはがされたシェーンコップがアッテンボローに覆いかぶさる。



ちかごろ。



シェーンコップの体の重みにアッテンボローは安らかな気持ちになる。抱きしめられて

胸をいたぶられて、ヤラシイコトをされてもイタイコトをされても。

「かなり、きついな・・・・・・。」シェーンコップが体に入ってきた。それすら。



安心する。



つい強がって見せたり大人ぶって見せても、シェーンコップは変わらずアッテンボローを

愛してるという。つらかったはずの言葉におぼれそうになる。腰に手を添えられしっかり

抱え込まれうちつけられる。



「あ、あん、やっ。ぅ・・・・・・。」こんな声が自分のどこから出るのだろう。顔が熱くなり

知らずに腰を使っている自分に気づきシーツをつかむ。

「つかむ相手を間違えている・・・・・・。」

つながったまま、手をつかまれてシェーンコップの首に回される。「あん。っや、あ、・・・・・・あ、あ。」

互いのぶつかり合う音と体液の粘着質な水音。自分の嬌声。

「・・・・・・まだ、つらいか・・・・・・・。」とアイジンがいうからまた口元だけ緩ませた笑みを浮かべた。

「でも、きてくれ・・・・・・。」



やめないで。

何度か突き上げられて一瞬頭がおかしくなったのかと思うほど、わけがわからなくなった・・・・・・。



ソファは明日こいつと一緒にきれいにしよう。

今は・・・・・・。

このまま、だかれておこう。笑顔が下手で隠せただろうか。今の気持ち。すこしずつアッテンボローは

アイジンに恋をしそうになる。



まだ、昔のあこがれも胸にいたいのだけれど、シェーンコップの側にいれたら大丈夫な気がする。

でも、そんな気持ちまだ見せたくないとアッテンボローは思う。

恋人へ昇進するにはなにか戦果が欲しいよなと腕の中でほくそえんだ。



「今夜はよく笑うんだな。」

「まあね。」



アイジンからコイビトになるのに何が必要だろうかと、思考が先走りする

青年提督は考えていた。



fin