もっと妖しく誘ってよ







「じゃあはじめようか。」

ヤンの一言は会戦を始めるときの声と変わりがなかった。

ただ違うのはここはあの「秘密部屋」でソファに座っていたアッテンボローを押し倒したあと

という点だけである。



「・・・・・・あの先輩。はじめるというのはこの状況でいうところあれですね。」

うん。とにっこり微笑むヤン。



「もっとムードがある誘うい方をしてくれればいいのにとお前、思ってるだろ。」

押し倒されてぶんぶんと首を振るアッテンボロー。

「・・・・・・。思ってません。襲ってください。思う存分。」

そりゃ妖しいというか艶のある情事のはじめを告げる言葉もききたい・・・・・

気持ちもないことはない。

けれど慣れたように誘われるときっとアッテンボローは思う。



こんなの先輩じゃない。と。



「お前のこと。好きだよ。」



・・・・・・好きってはじめて言ってくれたかもしれない。

指示代名詞や同意しか言ってもらってないけど今好きって言われたよな。

・・・・・・それで十分かも。



ついばむようなキスが降ってきて。

こそばゆい気もするけれどやっぱり紅茶の香りがする。

ちょっとアルコールの香りもするけれど。

ヤンの手が優しくアッテンボローの頭を撫でる。

「・・・・・・おれも先輩好きです。すごく好きです。」

しってるよ。

その穏やかな声のトーンに安らぐアッテンボロー。目を閉じて。

まぶたにキス一つ。これで・・・・・・・何回目のキスだろう。

技巧とか経験とか。そういうものが介在しない二人。

経験値も少ない二人。



「せんぱい。」

「・・・・・・なんだい。」

今日おれのこと好きっていいましたよね。素肌の肩に頬を寄せる。

このひとはいつも眠いから体温が高いのかな。

あたたかくて気持ちがいい。

「きらいならここにいっしょにいない。」

いいんです。



今夜一度。すきって言ってもらえたから。それで十分幸せです。

そういうと。



「そういうお前だから、好きなんだ。」

おれって幸せ。

「ほら。ちゃんと毛布をかけよう。風邪をそろってひくと・・・・・・。」

あやしまれますよね。

いろんなことを、うまくいってあげれなくてごめん。アッテンボロー。



「いいです。いわれなくてもわかってると思います。多分。」

使い古された愛の言葉よりあなたの優しい眸を見ているほうが

おれは幸せです・・・・・・。



fin


 



怪しくなさ過ぎますー。まいっか。なまなましい閣下はかけないわ。私には。読むのはすきだけど。