口移しなんて当たり前?







はいと手渡されたれたのはカードタイプの合鍵。



「これ先輩の家の鍵ですか。」

「どうして私の家の鍵をお前に渡すんだい。アッテンボロー。」

長年付き合ってきているけれど今ひとつこの人のハイブロウな感覚についていけないときが

アッテンボローにはある。

「・・・・・・おれたち恋人同士ですよね。」

「うん。まあね。」

「まあねっておれ鍵渡したでしょ。合鍵。ではこの鍵はなんでしょう。

もしかしてここにおれのお小遣いがあったり・・・・・・。」



しないよ。




ここはアッテンボローの執務室。おたがい執務室があるのは何かと都合がいい。

先日結局ヤン・ウェンリーの知略で(?)恋の告白させられたダスティ・アッテンボロー。

キスまではすんだ間柄。

アッテンボローはヤンに合鍵を渡している。これなら2人で一緒にプライベートの時間も

過ごせるだろうと。そして今日はもう一枚鍵。



「キャゼルヌに部屋を一つもらったんだ。」

「会うっていつですか。」

「仕事のないときとか終わったときとか。休みの日。二人で過ごすにはいい部屋だったよ。」

うわ。権力に物言わせてる。

「つまりここでデートしよってことですね。」

うん。

「お前の部屋でも悪くないんだけれどあんまり出入りが過ぎると人の目もあるし

私はひとに知られているからね・・・・・・。残念ながら。それに私の家だとユリアンに

気を使わせてもかわいそうだ。」

確かにそういう考えもあったなとアッテンボローは謝った。

「すみません。おれ考えがそこまで回ってなくて。」

ううん。とヤンはいった。気にするなと。

でもその部屋はなんといって借りたんですかとヤンにあわせて紅茶を執務室に

導入したアッテンボローはたずねた。コーヒーを飲んだ後はキスさせてくれない。

「うん。ごろごろする部屋がほしいって。アッテンボローと。」



だめですよー。

「それやばいっすよ。本当にそんなこと言って借りたんですか。」

「ばかだね。お前。一人で戦術や戦略を練るのに部屋がほしいって

言っただけさ。」

たばかられた・・・・・・。

「先輩ってやっぱりどSです。意地悪だ。」

「知らなかったのかい。私はそういう性格だよ。十年以上付き合ってて

わからないとは・・・・・・。」

開き直ったよ。

「今日よくわかりました。どSで結構です。鍵もらいますからね。」

アッテンボローは紅茶をまた一口。

ヤンも一口。・・・・・・飲んでじっと後輩を見る。「その紅茶はシロンかい。アルーシャかい。」

「おれは先輩ほど茶道楽じゃないですからどっちだったかな。ユリアンに

教えてもらった茶葉ではあるに違いないですね。でも同じ茶葉をつかってるんで

先輩が今飲んでいるのと同じ味ですよ。飲みますか。」

うん。



口移しでね。

「今は勤務中ですよ。先輩。」

赤面しつつアッテンボローが答えるとまたも金属音の「かちん」という

空気。

あ。すねさせてしまった。



「口移しは当たり前ですよね。先輩。好きですよ。」

「・・・・・・私は仕事に帰るとしよう。じゃあね。アッテンボロー。」

立ち上がりかけたヤンの両肩をぽんとクッションつきのソファに戻す。

「キスしたらお互い仕事に戻りましょうね。先輩。おれが悪かったです。」

一つ。

「あとでお前に仕事をあげよう。」

別にいらないけれどここで何か言うとさらにごねる。了解といって

唇を重ねる。やっとなれてきた5度目のキス。

「・・・・・・仕事に帰る。」

「この鍵はいつ使うんですか。」

「・・・・・・今夜。」

了解。

それからね。アッテンボロー。

「紅茶に砂糖を入れないで蜂蜜にしなさい。健康にいいしおいしいよ。」

そういうと黒髪の司令官閣下は自分の執務室へ戻った。

あれで照れてるんだ。からかわないでそっとしておこうとアッテンボローも仕事に戻った。



10分後。ユリアンがアッテンボローにヤン提督からご伝言ですよと厳重に封をした封筒を

もってきた。少年が帰ったあと中を開けるとメモ一枚。










かわいいんだけれどかわいくない恋人だなと一人苦笑する

アッテンボローであった。